ネパール評論

ネパール研究会

入管ハンスト死から1年:強制治療に向かうのか? (2)

2.入管施設収容の長期化と「無期限」規定の精神的苦痛
このところの来日外国人の増加・多様化とともに,入管施設(入国管理センター,入管収容所,入国者収容所)に収容される外国人の数も増えてきている。

年月日 被収容者数 長期被収容者数 難民認定申請中
2013年末 914 263 277
2015年末 1003 290 394
2017年末 1351 576 605
2018年6月末 1494 704 604


■被収容者数(長期=6か月以上。入管「退去強制業務について」*4)

入管施設に収容されるのは,不法入国,超過滞在,資格外活動,在留資格取り消しなどで不法滞在として摘発され,収容令書と退去強制令書を出された外国人である。

収容期間は,自主出国または強制送還まで,つまり「無期限」(下図参照)であり,長期に及ぶものも少なくない。とくにサニーさんのように自主出国せず,しかも送還先が受け入れに非協力的な「送還困難国」の場合は,収容は長期化しがちである。

また,これら被収容者の中には,難民申請をしている人も多い。難民については,日本は認定が厳しすぎると批判される一方,就労目的等のための「偽装難民申請」も少なくないとされている。収容長期化問題は,この「偽装難民申請」も絡み,一層複雑化し,解決が難しくなっているのである(*36,37,38)。

■退去強制手続き(*5)

このように「無期限」で収容されると,入管施設内での生活は,極めて厳しい。自由を奪われている上に,職員の対応や健康管理など居住環境も刑務所よりも悪いという。過剰と思われる「制圧」が報道されることも少なくないし,この4月下旬には東京入管収容中のコンゴ出身女性が裸同然で制圧される姿をビデオに撮られ,それを男性職員らに見られたとさえ訴えている(*39,40)。

そうした状況下の被収容者を精神的にさらに追い詰めるのが,国外退去までの無期限収容の規定。様々な事情で国外退去が困難な場合,被収容者には,いつまで収容され続けるのか,まったくわからない。

たとえ仮放免を申請しても,認められることは少ないし,ましてや仮放免に相当しないと判定されてしまえば,重度の傷病など,よほどの事由がなければ認められることはない。しかも,認められ仮放免されても,その事由がなくなったと判断されれば,いつでもすぐ再収容されてしまう。仮放免は,あくまでも「一時的収容停止」にすぎない(*40,41)。

*4 入国管理局「退去強制業務について」平成30年12月
*5 出入国在留管理庁「収容・仮放免に関する現状」令和元年11月25日
*36 難民支援協会HP
*37 二村伸「急増する長期収容」NHK開設室,2019/08/21
*38 望月優大「追い込まれる長期収容外国人」2018/11/05,gendai,simedia.jp
*39 「『みんなで裸を見たと言われた』・・・・入管収容女性が手紙で訴え」毎日新聞HP,2020/05/18
*40 「「2週間だけ仮放免」 繰り返される外国人長期収容 「一瞬息させ、水に沈めるようだ」」毎日新聞,2019/11/12
*41 織田朝日「入管施設でハンストを続ける被収容者を苦しめる「2週間のみの解放」」ハーバー・ビジネス・オンライン,2019/11/01

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/05/27 @ 14:18

カテゴリー: 社会, 労働, 人権

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