ネパール評論

ネパール研究会

ネパール憲法AI探訪(5): ネパールは社会主義国?

ネパール憲法前文は,マオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)の「人民戦争(1996-2006)」を,直接名指しはしないものの,事実上,それを中心とする「歴史的な人民運動(ऐतिहासिक जन आन्दोलन)」と呼んで肯定的に評価し,そのうえで,「社会主義(समाजवाद)」にコミット(志向)し,この憲法を採択し公布する,と宣言している。

また,次の第1編総則でも,ネパールは「社会主義志向(समाजवाद उन्मुख)国家」である(第4条)と規定している。

この憲法の前文と第4条の明文規定を見ると,ネパールは社会主義国ということになる。が,本当にそうなのか? この大問題につき,AI先生に尋ねてみた。

Bing日本語版は,「ネパールは社会主義国ではありません」と断言。これは論外。情報源が日本語に偏っているからだろう。

Bing英語版,Bard日本語版,ChatGPT3.5,Perplexityの回答は,要点は捉えているものの,説明不足で,少々物足りない。

これらに比べ,Bard英語版の回答は,バランスの取れた良い回答。以下,抜粋ーー

「ネパールは,いくつかの限定をつければ,社会主義国家と考えられる。2015年採択の現行憲法は,この国を『社会主義志向の連邦民主国』と定めている。これはネパールが社会主義諸原理を志向していることを意味するが,にもかかわらず,ネパールは完全な社会主義国ではない。ネパールには,まだ私的領域がたくさんあり,政府が経済の全分野をコントロールしているわけではないからである。・・・・社会主義の解釈にはいくつかありうる。政府が生産手段のすべてを所有している国を社会主義と考える人もいれば,私的分野が相当あっても政府が主要な経済的役割を担っているのであれば,その国を社会主義国と考える人もいる。後者の定義を採れば,ネパールは社会主義国と考えられる。・・・・ネパールが社会主義国か否かは,考え方による。誰もが同意する社会主義の唯一の定義はない。」

いささか,揚げ足取り批判のしにくい「模範回答」の気はあるが,それはそれとして,このような優れた回答が,いつでもだれでも無料で瞬時に得られるとは,恐るべき時代になったものだ!

 ■共産主義政党優位の議会(Asia Pacific Foundation of Canada

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/09/02 @ 16:24