マオイストの憲法案(7)
4(3)自由権(3)
[2]平和的に武器を持たずに集会する自由(23条(2)b)
この集会の自由は,次の理由で法律により制限できる。
・主権または統合を損なう行為
・支邦間の調和的関係または法と秩序を危うくする行為
このような「但し書き」があれば,集会の自由はないも同然だ。真っ先にマオイスト集会が禁止されるだろう。
[3]組合および団体を組織する自由(23条(2)c)
これはいわゆる結社の自由であるが,この自由も次の場合には法律で制限できる。
・主権および統合を損なう行為
・国民に対するスパイ行為
・カースト,民族,宗教または社会集団の間の調和的関係を危うくする行為
・暴力扇動行為
・公序良俗に反する行為
このような但し書きがついておれば,結社の自由は無いに等しいが,特筆すべきは,なんといっても「国民に対するスパイ行為」。
ネパール語版が手元にないのでネパール語でどう表記されているか分からないが,英訳にはUNDPがかかわっており,ネパール語版と英語版にはそれほど大きな語義の差は無いと見てよい。つまり,マオイストは堂々と,反国民スパイ罪,反国家スパイ罪を憲法に掲げているのだ。
このスパイ罪で,真っ先に投獄されそうなのが,コングレスやマデシの親インド派,そして統一共産党の親インド派(前首相ら)。そして,非マオイスト政権になれば,もちろんマオイスト諸氏がこのスパイ罪で訴追されることになる。
マオイスト諸氏の頭の中には,「法の支配」も「法の下の平等」も,全くないらしい。敵に向けて使うことばかり考えて,憲法案を作っている。もともと法は自分の手を縛るものなのに,そんなことは思いも及ばないらしい。
スパイ罪を明記するような憲法は,最悪。1962年パンチャヤト憲法にすら,スパイ罪の規定はなかった。スパイ罪こそ,マオイスト憲法案の最もマオイストらしい規定といえる。
マオイストの憲法案(6) (5) (4) (3) (2) (1)
谷川昌幸(C)