ネパール評論

ネパール研究会

マオイストの憲法案(17)

4(11)宗教的自由の権利

マオイスト憲法案第32条は「宗教的自由の権利」を保障している。先述のように,この条文も90年憲法第19条や暫定憲法第23条の規定を下敷きにしつつ,いくつか重要な修正を加えている。

第32条 宗教的自由の権利
(1)自分自身の宗教を告白し,実践し,および保存する自由,またはどのような宗教とも関わらない自由(無宗教の自由)の保障。ただし,公衆衛生,公序良俗もしくは公安を害する行為,または他者を改宗させる行為もしくは他者の宗教を害する行為は認められない。
(2)各宗派は独立を維持する権利ならびに宗教的場所および基金を保有する権利を有する。

90年憲法にも暫定憲法にも「無宗教の自由」の記述はない。宗教を「人民のアヘン」(マルクス)と考える,いかにもマオイストらしい修正だ。

また,「但し書き」には,90年憲法,暫定憲法と同じ他者改宗(宣教・布教)行為の禁止のほかに,公衆衛生・公序良俗・公安を害する行為を加え,宗教活動の自由を制限しやすくしている。この「但し書き」を利用すれば,宗教の自由はどのようにでも制限できるであろう。これまた,いかにもマオイストらしい修正である。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/05/08 @ 23:01

カテゴリー: 宗教, 憲法

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