ネパール評論

ネパール研究会

絞首刑を煽るインド民主主義:A.ロイ(4)

4.裁判の概要
(1)逮捕(2001年12月)
国会襲撃事件で逮捕・起訴されたのは,次の4人である。

▼アフザル(Mohammed Afzal Guru)
1969年カシミール生まれ。妻Tabasumと息子。ジャム・カシミール解放戦線(JKLF)参加。デリー大学卒(1994)。国境治安部隊投降(1994)により「投降ミリタント」となる。医療品業を営み,スリナガルとデリーを往復。2001年12月15日,スリナガルの果物市場で,いとこのシャウカトとともに逮捕。

[容疑]テロ防止法2002(POTA),爆発物取締法および刑法に定める罪。
[記者会見]2001年12月20日,デリー警察が記者会見,アフザルを引き出し自供強要。

    130303a ■アフザル(Times of India, Feb 9, 2013)

▼シャウカト(Shaukat Hussain Guru)
アフザルのいとこ。果物商。12月15日,スリナガルでアフザルとともに逮捕。

▼アフザン(Afsan Guru)
シャウカトの妻。アフザルとシャウカトが逃亡を図ったと警察の主張するトラックの所有者。アフザルとシャウカトの逮捕後,逮捕される。妊娠中。刑務所内で出産。

▼ジーラーニ(S.A.R. Geelani)
デリー大学アラビア学講師。デリーで拘束され(12月14日?),その後,逮捕(15日)。

   130303b  ■ジーラーニ(Outlook, Feb 28, 2005)

(2)起訴(2002年5月14日)
早期結審法廷(fast-track court)に被告4人を起訴。[罪状]テロ防止法2002(POTA),爆発物取締法および刑法に定める罪。

(3)テロ防止法特別法廷(第1審)判決(2002.12.18)
  ・アフザン:投獄5年
  ・ジーラーニ,シャウカト,アフザル:死刑

(4)デリー高裁判決(2003.10.29)
  ・シャウカト,アフザル:死刑
  ・ジーラーニ,アフザン:無罪

(5)最高裁判決(2005.8.4)
  ・アフザル:死刑(2013年2月13日午前8時,絞首刑執行。Tihar刑務所内埋葬)
  ・シャウカト:投獄10年(素行良好により6月短縮し,2010年12月釈放)
 
[死刑判決理由]
「アフザルの自供とは別に,状況証拠を検証する。・・・・それゆえ[かりに自供を除外しても],アフザルがこの重大な共謀犯罪の一員であったことを示すに十分なだけの状況証拠がある,と判定される。」

「本件における最も適切な刑罰が死刑であることに疑いの余地はない。第1審(事実審)裁判所と高等裁判所もそう審判した。これは,インド共和国の歴史に類例を見ない事件であり,まさしく希有な事件の中でも最も希有な事件(rarest of rare cases)である。強力な武器と爆発物を使い,インドの多くの国民代表議員や憲法設置機関や政府職員の安全を脅かし,治安部隊を攻撃し,もって主権的な民主主義制度を攻撃し覆そうとする――これは,最も危険なテロ行為に他ならない。これこそ,希有な事例の中でも最も希有な事例(rarest of rare cases)の典型的な実例である。」

「この事件は,重大な被害をもたらし,全国を震撼させた。社会の集合的良心(the collective conscience of the society)は,襲撃犯に死刑を科すことによってのみ満足させられるであろう。テロリストや共謀犯の行為はインドの統一・統合・主権に対する挑戦であり,反逆・陰謀犯と判明した者には極刑をもって償わせる以外に方法はない。上訴人は投降ミリタント(surrendered militant)であり,国家反逆行為を繰り返した。上訴人は社会の脅威(a menace to the society)であり,その生命は絶たれねばならない。したがって,死刑判決は支持される。」
  (出典) CASE OF MOHD. AFZAL (A1), Supreme Court Judgment, in Outlook.

(注)複雑な事件のため不正確な部分があるかもしれない。もしあれば,後日訂正する。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/03 @ 14:50

カテゴリー: インド, 司法, 人権

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