ネパール評論

ネパール研究会

レグミ最高裁長官,暫定選挙管理内閣「議長」就任

3月13日,UCPN,NC,UML,UDMTの主要4党が,最高裁長官(Khil Raj Regmi)の下で制憲議会選挙を実施することに合意した。主な合意内容は,以下の通り。

(1)暫定選挙管理内閣
 (a)内閣の長は,「首相」ではなく,「議長」とする。「議長」には,レグミ最高裁長官を任命する。制憲議会選挙終了後,レグミ氏は「議長」を辞任し,最高裁長官に復職する。
 (b)大臣は11名とし,高位官職経験者の中から選任する。

(2)選挙実施日
 制憲議会選挙は,6月までに実施する。もし6月までに実施できない場合は,12月15日までに,選挙実施日を決定する。

(3)制憲議会の構成
 ・定数:491(小選挙区240,比例制240,内閣指名11)
   (旧制憲議会:定数601[小選挙区240,比例制335,首相指名26])

 ・任期:無期(任期規定なし)
  (旧制憲議会任期:2年)

(4)就任宣誓
 レグミ最高裁長官の暫定選挙管理内閣「議長」就任宣誓は,14日午前9時からの予定。

  130314 ■レグミ最高裁長官/暫定内閣議長(最高裁HP)

――以上が,13日の4党合意の骨子だが,いやはや泥縄というか,面妖というか,何ともいいようのないヒドイ内容だ。

これは,事実上,政治家の任務放棄宣言・降伏宣言だから,統治放棄された国家の管理を最高裁判所(司法)にお願いするのは,やむを得ない。(先述のように,本来なら大統領の下での選挙とすべきではあるが。)

また,政治家が自ら統治能力欠如を認めたのだから,官僚(行政)に国家運営を丸投げするのも,やむをえない。テクノクラート支配,専門家支配だが,素人の政治家に統治能力がなかったのだから,いくらみっともなくても,自業自得,いたしかたあるまい。

しかし,この丸投げには,暫定といいつつも,とんでもないおまけがついている。6月までに選挙ができなければ,12月15日までに選挙実施日を決定すればよい。結局,いつ選挙ができるのか,実際には,まったくわからない。

さらに,かりに,めでたく選挙ができ,新しい制憲議会が成立しても,この議会には任期の規定がない。無期限議会! いつまでも,永遠に存続可能なのだ。これでは,正式の憲法がいつ制定されるか,まったく見当もつかない。

このままでは,統治の正統性が限りなく蚕食されていき,「法の支配」はますます衰退し,ネパールは底なしの無政府状態に沈み込んでいくであろう。

◆暫定選挙管理内閣成立
この記事を書いている間に,レグミ最高裁長官が「議長」就任宣誓を行い,レグミ氏を「議長」とする暫定選挙管理内閣が正式に発足した。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/14 @ 14:38