ネパール評論

ネパール研究会

ネパール憲法AI探訪(9): 新領土地図発表,なぜ?

1 憲法の領土規定
ネパール憲法第1編総則の第4条(2)は,ネパールの領土について規定している。

第4条 ネパール国家 (2)ネパールの領土(क्षेत्र)は以下より構成されるものとする。
(a)この憲法の施行時の領土,および
(b)この憲法の施行後に取得の他の領土。

この領土規定そのものは明快であり,特に問題はない。難しいのは,現実にネパール領土はどこまでか,ということ。

2 印中に挟まれたネパール
ネパールは,東・南・西をインドと,北は中国(チベット)と国境を接している。「二つの巨岩に挟まれたヤムイモ」としてのネパール!

ネパールを挟む印中は,ともに大国で広大な領土を持つが,だからといって領土問題に寛大なわけではない。両国とも領土については極めて敏感,ネパールとの間でも,強弱はあれ,ほとんど絶え間なく領土争いを繰り返してきた。国境問題は,内陸国ネパールにとって宿痾と観念せざるをえないだろう。

3 ネパール領土地図改定
そのネパールが2020年,新しい領土地図を作成し,発表した。下記国章の白抜き領土地図の左上部を比較すれば,新旧両地図の違いは歴然。詳細はBBC記事参照

旧地図は,ネパール政府自身,長年使用してきたものだし,市販の地図もみなこれであった。グーグル地図は,いまのところ,まだ旧地図のままである。

それなのに,なぜネパール政府は,旧地図を大幅に書き改め,領土を拡大した新地図を発表したのか? 印中,とりわけインドを激怒させ,関係悪化を招くだけではないのか?

230922b ■旧国章/新国章

4.ネパール地図改定・発表の理由
ネパールは,なぜ,これほど大幅な領土地図改定を行い,一方的に発表したのか? これは難問だが,AI先生に,質問文をいくつか変え,お伺いしてみると,歴史的経緯から国際関係まで含め,懇切丁寧な回答が示された。

それらの中には,新地図に怒ったインドが「ネパールとの外交関係を断絶しています」(Bard日本語版)といった,トンデモナイ回答もあるにはあるが,そうした不可解な回答を除けば,大半の回答はよく出来ていた。AIは瞬時も進歩をやめない。

今回特に感心したのは,日本語版Bingが,日本語データだけでなく英文データをも使用するようになり,回答レベルが格段に上昇したこと。以下,少々,情報不足気味ではあるが,日本語版Bingの回答をご紹介する。なお,印ーネー中の複雑な国境紛争について,歴史的経緯など詳細は,直接,AI先生にご質問ください。

[質問]ネパール政府は,なぜ新しい領土地図を発表したのですか?
[Bing日本語版回答】
ネパール政府が新しい領土地図を発表した理由は、インドとの領有権問題に関連しています。新しい地図には、リプレク(Lipu Lekh)、カラパニ(Kalapani)、およびリンピヤドゥラ(Limpiyadhura)の一部地域が含まれています。これらの地域は、インドおよび中国と国境を接する戦略的に重要な領土と考えられています。

また、中国との関係も影響している可能性があります。ネパール政府は、中国が国境を越えて侵入しているとする報告書をまとめました。この報告書は、ネパールが強化してきた中国との関係に緊張をもたらす可能性があります。

これらの情報から、ネパール政府が新しい領土地図を発表した理由は、領土問題の明確化と、国際的な関係の調整にあると考えられます。

230922a ■新領土地図

【参照1】India and China: How Nepal’s new map is stirring old rivalries, BBC, 2020/06/10

【参照2】ネパール、新紙幣にインドとの係争地 領土対立激化か,時事通信 ,2024/05/06

【参照3】国土図,コインでも混乱(2024/05/12追加)

240512a 240512b 240512c

240512d

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/09/22 @ 16:46