ネパール評論

ネパール研究会

京都の米軍基地(21):「苦渋の判断」の甘さ

京丹後市の中山市長は,9月11日の議会定例会(第2日)や9月19日付文書「TPY-2レーダー配備への協力及びこれを巡る経過,考え方について」において,米軍Xバンドレーダー受け入れを表明した。市長は,「苦渋の判断」と繰り返しているが,事柄の重大性に比べ,あまりにも甘く,軽い。米日「政産軍共同体」は,何ら苦く渋い思いをすることなく,タナボタで,京の都の西北,経ヶ岬を手に入れることになる。

市長の説明によれば,防衛省からの申し入れが2013年2月26日,それ以降,半年以上にわたり,「防衛省等による15回をこえる説明会」や市議会での議論等を通して様々な検討と確認を行ってきた。そして,9月10日,京都府知事とともに小野寺防衛大臣を訪問し「大臣から政府として真摯で責任ある対応の確認を得た」ので,京丹後市として「必要な協力を行うことと総合的に判断」したというのである。

しかし,この判断のどこに「苦渋」があるのだろう? あらかじめ決められたシナリオ通り,事は淡々と進められ,予定通りの決着を見たということではないのか?

そもそも,これは自治体=地方政府の自立的「判断」に値するものではない。お上(かみ)が申されることなので,お国の大義のため,滅私奉公,忠義を尽くします,ということに他ならない。まさかと思われる方は,この上意下達の関係を念頭に置き,次のような市長の文章(TPY-2レーダー配備への協力及びこれを巡る経過,考え方について)を読んでみていただきたいーー

「今回のご要請は,わが国の責任ある政府当局から国の防衛,国の安全,安心という大きな国益が真剣に問われています。・・・・同じこの国の地域の一員として,このために必要な負担を分かち合い,いささかなりともできる貢献はやっていくという姿勢が大切であるということは,自ずと道理であります。」(日本語になっていないが原文のまま引用)

完全な上から目線。上意下達の官僚主義の作文。ここには,地域住民一人一人の権利保障から出発するという民主主義の精神は認められない。

だから,市議会での説明も官僚答弁,まるで面白くない。そもそも,米軍基地受け入れという重大案件を,なぜこれまで本会議でなく主に議員全員協議会で議論してきたのか? 

市議会会議規則が手元にないので正確には分からないが,一般に協議会は協議するところであって,正式の議会審議の場ではない。にもかかわらず,米軍基地問題は,これまでほとんど議員全員協議会で議論されてきた。真剣な議論や言質を取られることを恐れているとしか思えない。そのくせ,おそらく協議会で議論は十分やったとされ,正式議会での審議は採決のための単なる儀式で済まされてしまうのだろう。上意下達,下請け地方議会らしい姿だ。

そのせいであろう,小野寺防衛大臣訪問直後であるにもかかわらず,議会9月定例会でこの問題について質問をしたのは,京丹後市HPを見る限り,共産党の3議員だけ。いったいどうなっているのだ。頑張れ,共産党!

議会定例会(9月11日) (ユーチューブ音声再生→下記クリック)
田中邦生(日本共産党)
米軍基地配備問題について
 (1)安全安心は本当に担保されたのか
 (2)「無いに越したほうがいい」が全市民の声
 (3)危険な米軍基地配備計画は撤回すべき
橋本まり子(日本共産党)
米軍基地配備と住民の安心について
 (1)市が提示した受け入れに際する条件で、事件事故に関して、市民は本当に安心といえるのか
森 勝(日本共産党)
米軍基地問題について
 (1)現状と基本的問題点について

[参照]
京丹後市・中山泰市長の経歴 
   130928
学歴
昭和50年3月 峰山中学校卒業
昭和53年3月 天理高校卒業
昭和60年3月 京都大学経済学部卒業
職歴
昭和60年4月 総理府・総務庁入庁
平成元年4月 科学技術庁科学技術振興局研究交流課専門職
平成3年4月 総務庁行政管理局行政情報システム企画課係長
平成4年7月 総務庁行政管理局行政手続法制定準備室室長補佐
平成6年7月 総務庁行政管理局副管理官
平成8年8月 沖縄開発庁沖縄総合事務局総務部人事課長
平成10年7月 沖縄開発庁長官秘書官(井上吉夫、野中広務、青木幹雄 各長官)
平成13年1月 経済産業省大臣官房企画官 兼 製造産業局人間生活システム 企画チーム長・デザイン政策チーム長
平成14年8月 内閣府総合規制改革会議事務室次長
平成16年5月17日 京丹後市長
(京丹後市 http://www.city.kyotango.kyoto.jp/shisei/shicho/profile/index.html)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/09/28 @ 21:40