中国,HRW非難のネパール政府に援護射撃
新華ニュースが,「ネパール政府『中国の圧力でチベット人を抑圧』という指摘に反論」という記事を掲載している(日本語版4月4日)。趣旨明快。HRW(ヒューマンライツウォッチ)報告書を非難したネパール政府の全面擁護,援護射撃だ。
先述のように,HRWやその背後の米欧が,カネも出さずにネパール政府のチベット難民処遇に対する批判を続けるなら,ネパール政府が,おしみなくカネと人を出し,中国招待・留学の大判振る舞いを始めた中国にますます接近することは明白だ。むろんHRWや米欧は外交巧者であり,そんなことは百も承知の上でやっているのだろうが,中国もまた勝るとも劣らない外交巧者,結果がどうなるか予測は難しい。
いずれにせよ,当事者たるネパール政府は,難しい立場にある。理念からいえば,まずは難民個人の人権だし,これは正論だが,他方では,それは世界搾取で優位にある―と見られている―米欧だからこそ言えることだ。
チベット難民処遇に関し正義はHRWや米欧の側にある。いずれ正義が勝利し,チベット難民の人権は回復されるだろうし,むろんそうあるべきだ。が,しかし・・・・。いまのネパールからすれば,おそらく
正義は力,力は正義! Right is Might, Might is Right!
と受け止められているだろう。HRWや米欧の方が洗練されてはいるが,強者の権力的支配という点では,中国のやり方と本質的に変わりはしない。文句があるなら,弱小国搾取,弱者人民搾取を撤廃してから,ネパール政府に人権尊重を要請せよ。おそらく,できることなら,ネパールはそう叫びたいにちがいない。
自省なき正義や人権の一方的主張は,どこか胡散臭い。
▼情緒動員競争:HRW報告書(左)と新華ニュース(右2枚)
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[参照]HRW報告書「中国の影の下で: ネパールにおけるチベット人虐待」,ネパール政府,「チベット人虐待」HRW報告に激怒
谷川昌幸(C)
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