ネパール評論

ネパール研究会

京都の米軍基地(40):左右の「ニアミス」

4月20日の「米軍レーダー基地反対集会」では,市民団体・労組等と右翼諸団体との「ニアミス」があったらしい。新聞・ネット情報だけで正確には分からないが,右翼もかなりの街宣車を出し,「左翼」批判を繰り広げていたという。地元の人の多くは,おそらく初体験であり,驚き,恐怖を感じたであろう。

それでも右翼の行動や演説は,このところずいぶんスマートになってきた。20日の「反対集会」への反対街宣でも,米軍駐留には自分たちも反対だなどと語りかけていた。レトリックもうまい。

あと一歩,右翼が上品になり「国粋主義(ナショナリズム)」の原点に立ち戻るなら,庶民の支持を一挙に拡大するにちがいない。安倍首相の指揮する「美しい国」合唱団への参加だ。

市民団体・労組等(右翼のいう「左翼」)にとっては,右翼との「ニアミス」や衝突よりも,むしろ街宣車から「美しい国」の合唱を,美しい歌声で流され,住民の心情的共感をゴッソリと持って行かれる方が致命的であろう。

美的・情緒的には,もともと保守派や右派の方がはるかに洗練されていた。そこにドスも利く右翼が参加し始めたら,市民派・護憲派・左翼などはひとたまりもあるまい。

すでにマスコミは,「美しい国」のセイレ-ンの声に引き寄せられ,合唱を始めた。たとえば,韓国船沈没事故報道。連日,テレビ・新聞が,この悲劇を「一流国家・日本」では起こりえないような,お粗末な「三流国家・韓国」の事故として,繰り返し繰り返し報道している。

たしかに,この客船運航や事故対応には多々問題があったようだが,日本のマスコミは,悲劇から謙虚に学ぶというよりは,むしろそれらを韓国がいかにダメな国家・国民か,日本がいかに優秀な国家・国民かを情緒的に訴えるための格好の話題として利用してきたといわざるをえない。

日本マスコミは,すでに「美しい国」の合唱に参加し始めた。いわゆる護憲派・市民派・左翼は,「美しい国」のセイレーンの声に抵抗しうるだろうか? それとも,岩礁に乗り上げ,沈没してしまうのであろうか?

谷川昌幸(C)

   

Written by Tanigawa

2014/04/28 @ 13:03