ネパール評論

ネパール研究会

ネパール憲法AI探訪(32): 国歌(8)

6.国家尊厳法案の理念と現実
国旗・国歌が,いまネパール社会でどのように扱われているか,その実情は,長らくネパールに行っていないので,よくわからない。が,その一端は,すでに何回か言及した「国家尊厳法案」の扱いを見ると,ある程度,うかがい知ることができる。

この「国家尊厳法案」は,既存の「国旗・国歌使用規定」を再確認し,いくつかの規定を補足・強化したうえで,大統領をはじめとする諸機関の儀式における相対的位置を詳細に定めたもの。

この「法案」は,もともと政党ではなく,8人の議員が2023年3月,上院(国民議会)に提出したもの。これを,上院は全会一致で可決した。このときの首相は,先述のオリ(UML)ではなく,UCPN-Mのプラチャンダ(PK・ダハル)であった。これだけを見ても,ネパールでは,党派にかかわりなくナショナリズム支持がいかに強いかが,よくわかる。

ところが,肝心の「国家尊厳法案」そのものは,この「法案」で最高裁長官の序列が,首相に次ぐ第4位から,国民議会議長の次の第6位へと2段階引き下げられることになっていることに対する反対が法曹界を中心に強く,紛糾して収拾がつかず,いまもって法律としては成立していない。いかにもネパールらしい。
【参照】*1 NA unanimously approves Bill on National Dignity, Republica,2023/03/26
*2 Ishwari Subedi, National Dignity Bill in parliament sees changes to the hierarchy proposal, Republica, 2023/10/31

7.AI国歌問答
前述のように,ネパールにおける国旗・国歌の扱いには,よくわからないところが少なくない。そこで最後に,AIにも尋ねてみることにした。

またまたビックリ仰天! 使用したAIは一般無料公開のものばかりなのに,それらの回答は,さらに洗練され,専門家回答に近いものになってきた。

ただし,注意すべきは,日本語版と英語版の落差。まるで子供と大人。これでは,日本は情報二流国となり,世界から取り残されてしまうだろう。恐ろしい。要注意!

以下,国歌に関するAI問答のうち,興味深いものを2つだけ紹介する。

(1)映画館での国歌演奏
】現在,ネパールの映画館は,上映前に,国歌を流していますか?
英語版Gemini回答】映画館での国歌演奏について,情報はいささか錯綜している。
2019年9月,政府が,映画館に対し,上映前の国歌演奏を命じる命令を出した。これは,国家の威信を高めることを目的とした政策である。
しかしながら,報道によれば,政府は,この命令を実施するための具体的な計画は持っていなかった。・・・・
そのため,現在,国歌が映画館で命令通り流されているかどうかは,はっきりしない。

(2)寺院での国歌演奏
】ネパールの寺院では,毎日,国歌が流されていますか?
英語版Gemini回答】いいえ,ネパールの寺院でネパール国歌が毎日流されることは,通常は,ありません。
しかしながら,2019年に,カトマンズにあるヒンドゥー教大寺院のパシュパティナートに対して,毎夕の礼拝前に国歌を流すことを求める通達が出された。この最近の通達には反対もあり,現在のところ,ネパールの諸寺院で国歌演奏が広くおこなわれているという状況ではありません。

240624インドラジャトラ祭国軍国歌演奏(Balmiki Adhikari,Youtube)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/06/24 @ 15:02