ネパール評論

ネパール研究会

失われ行く古き良きキルティプル

キルティプルの変化が加速度的に速くなっている。ほんの数年前までは,丘の上は古来の家並みやレンガ敷きの路地が美しく調和していたのに,それらが次々に壊され,今風の家やコンクリート道路に造り替えられている。このままでは,あと数年もすれば,伝統的街並みは,あらかた姿を消してしまうだろう。

丘の上のキルティプルは,生活には,不便だった。食糧や生活物資は急な坂道を人力で運び上げなければならない。無責任な余所者の目には,大量の稲藁や重そうな籾袋を担い登ってくる女性たちは絵になるが,これがいかにたいへんな重労働であるかはいうまでもない。

また狭く段差も多いレンガ敷き路地は,バイクや車の通行には不便。だから,生活を考えるなら,情緒豊かなレンガがはがされ,効率だけの無粋なコンクリート通路にされるのは,いたしかたない。これらの写真でも,壊されている家の左隣はすでにスチールシャッターとなり,右隣の入口にはバイク用のコンクリート通路がつけられている。電柱はコンクリート製。懐古趣味の余所者がどう感じるにせよ,生活のためには,街の近代化はやむをえないのだ。

▼取り壊される伝統的家屋
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しかし,奇跡的によく保存されてきたキルティプルが,このような形で失われていくのは,いかにも惜しい。地元の人々が話し合い,街全体の保存がはかれないだろうか。丘の上だけでも保存されれば,ときとともに文化遺産としての価値が高まり,多くの観光客を引き寄せることは,まちがいない。空港からもカトマンズ中心部からもほんの数十分,しかもヒマラヤがよく見える。立地は申し分ない。小さな街だから,観光と関連事業で十分生活できるようになると思う。

が,もう手遅れかもしれない。残念ながら。

▼夕陽の中のレンガ工場(キルティプルより)
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/26 @ 20:47

カテゴリー: 社会, 経済, 文化, 旅行

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