ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

CDC特別委員会,憲法原案草案提出

1.憲法原案草案提出
憲法起草委員会(CDC)が設置した特別委員会(クリシュナ・プラサド・シタウラ委員長=NC)が,6月23日夜,新憲法原案のもととなる草案を作成し,CDCに提出した。この草案によれば,新憲法は35編312条の超巨大憲法となる。ネパールお得意の,諸要求加算方式の結果であろう。

この4党「16項目合意」に基づく憲法起草については,最高裁が現行暫定憲法に違反するとして停止命令を出し,またヤダブ大統領も反対していたが,いまのところ4党の思惑通り進んでいるようだ。

2.インドの介入
この流れに,CPN-M(バイダ派マオイスト)やマデシ系諸派の多くは強く反発している。たとえば,CP・ガジュレルCPN-M副議長は,4党はインドの圧力により「16項目合意」に署名し新憲法をつくろうとしているが,これがこのまま進めば,再び内戦になる,と警告している。

インドの介入については,巨額の震災復興援助も絡んでいると言われている。ネパールの政治が安定しないと,欧米中心の国際社会の介入を招き,それはインドが最も嫌うところだ。だから,インドが主要諸政党に圧力をかけ,新憲法の制定を急がせている,というのである。ありそうな話しだ。

3.復興援助会議
その憲法制定の観点からも注目されている復興援助会議は,53カ国代表や様々な援助機関関係者が集まり,明日カトマンズのソルティ・クラウンプラザで開催される。ネパール政府は,震災被害を約7千億ルピーと見積もり,それに対する復興援助3千億ルピーを期待しているらしい。日本もすでに40億ルピーの援助を表明。

明日の復興援助会議でどの程度の援助が約束されるかまだわからないが,巨額となることはまずまちがいない。が,もしネパールが新憲法制定による政治の安定化に向かわなければ,援助実施が困難になり,援助の約束は反故にされるかもしれない。新憲法制定は,実利とも深く関わっているのだ。

 150624 ■クラウンプラザ

4.インド寄りの新憲法体制?
新憲法制定は,その意味では,国際社会の暗黙の要求でもある。インドは,この情況を巧みに利用し,ネパール主要諸政党に圧力をかけ,「16項目合意」に署名させ,インド寄りの新憲法体制をつくろうとしている,と見られている。

このような見方の具体的な裏付けは困難だが,新憲法制定への動きのあまりにも急なところを見ると,あながち的外れでもないような気がしてならない。

[今後の予定日程]
憲法起草委員会(CDC:30党代表,73委員)が,6月28日までにCDC憲法原案を作成し,制憲議会(CA)へ提出
⇒CAにおいてCDC憲法原案を審議
⇒国民の意見聴取
⇒CAが憲法原案に必要な修正を加え,憲法案を作成
⇒この憲法案をCA本会議において2/3の多数により採決
⇒大統領が新憲法を公布

[参照]
(*1) “16-pt deal under India’s influence: Gajurel,” Ekantipur,Jun 24
(*2) “CDC TASKFORCE RECOMMENDS 35 SECTIONS, 312 ARTICLES IN NEW STATUTE,” Republica,24 Jun.
(*3) “Oli asks court, Prez to stay away from politics,” Ekantipur,Jun 24
(*4) “Govt pins high hopes on tomorrow’s donor meet; Officials preparing for conference expect grant, loan commitments to the tune of $3 billion,” Ekantipur, jun 24.
(*5) RUDRA PANGENI,”INT’L CONFERENCE FOR NEPAL’S RECONSTRUCTION: GOVT LOOKING FORWARD TO GRANTS, SOFT LOANS,” Republica, 24 Jun.
(*6)「震災復興の国際パワーゲーム」けぇ がるね?日記(ネパールの空の下) 6月21日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/06/24 @ 20:23

カテゴリー: インド, 経済, 憲法

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