京都の米軍基地(77):裁かれない米兵犯罪
米軍経ヶ岬基地は,在日米軍基地の一つであり,したがって他の基地周辺で起こっていることが京丹後でもいずれ起こると覚悟すべきである。京丹後だけは例外と考えるのは非合理であり,根拠なき単なる希望的観測にすぎない。では,何が起こるのか? この問題を考えるのに参考になるのが,この本:
●布施裕仁『日米密約 裁かれない米兵犯罪』岩波書店,2010年
「なぜ米兵犯罪は裁かれないのか。強姦や暴行の被害者が裁きを求めて得られないのは,なぜなのかーー。徹底的取材で明らかになった日米密約とその関連文書には,米兵犯罪を日本で裁かせないようにするための数々の巧妙なトリックと日米両政府の申し合わせが隠されていた。・・・・現代の治外法権を追う。」(表紙カバー)
本書によれば,米軍人・軍属らによる犯罪や重大事故が,いまも日本各地で幾度となく繰り返されている。その要因はいくつか考えられるが,最も根本的なものの一つが米軍人・軍属には日本の警察権や刑事裁判権が十分には及ばないこと。
米軍人・軍属は,日米地位協定により,基地に逃げ込めば日本側には逮捕されず,また「公務中」の犯罪や交通事故は米軍側に裁判権がある。(「公務中」か否かは米軍側が判断。)さらに,「協定」以外にも,「非公開取り決め」や「密約」が巧妙に幾層にも仕組まれており,米軍人・軍属は不起訴にされたり,刑が著しく軽くされたりする事例が多数ある(vii頁)。いわば「現代の治外法権」。これでは,米軍人らの犯罪や交通違反がなくならないのは当然といえよう。
▼米軍人らの犯罪(2001~08年,17頁表2より作成)
[罪名] | [起訴(人)] | 「不起訴(人)] | [起訴率(%)] | [起訴+不起訴(人)] |
殺人 | 3 | 1 | 75 | 4 |
傷害暴行 | 64 | 174 | 27 | 238 |
強姦 | 8 | 23 | 26 | 31 |
強制猥褻 | 2 | 17 | 11 | 19 |
住居侵入 | 17 | 78 | 18 | 95 |
強盗 | 33 | 13 | 72 | 46 |
窃盗 | 37 | 474 | 7 | 511 |
車等による 業務上過失 死傷 |
427 | 2140 | 17 | 2567 |
この数字は,表沙汰になったものだけ。それでも,8年間で,これだけある。被害者の中には,米軍人・軍属らの享受する「現代の治外法権」に絶望し,被害の訴えを諦め,泣き寝入りしてしまった人も少なくないはずだ。
京丹後は,「国益」のために米軍基地を受け入れた。その代償も,むろん地元京丹後が支払うことになる。お国のために滅私奉公!
【参照】伊波洋一・柳澤協二『対論 普天間基地はなくせる』かもがわブックレット,2012 [2016年1月26日追加]
[伊波](米軍基地の)残し方に二つの大きな問題があります。・・・・
一つは、米軍基地の運用を米軍に委ね、日本政府の関与を認めないというものです。つまり、米軍基地の使用権の白由です。
もう一つは、米軍人とその家族及び軍属が起こす犯罪について、目本政府が責任を問わないというものです。日本に裁判権があっても、それを放棄するという密約がある。
最近、沖縄で帰宅時の危険運転の事故で軍属が若者を死亡させ、目本側に裁判権がないことが問題になりました。なぜかと言うと、公務中の事故はアメリカが裁くことが取り決められているからです。でも、アメリカでは一九六〇年の連邦最高裁判決で戦時以外は軍属を軍法会議で裁いてはいけないということが確定している。つまり、軍属は日本でもアメリカでも裁かれない。飲酒運転であっても帰宅中は公務とされます。こういうことがずっと続いてきたのです。(7頁)
谷川昌幸(C)
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