ネパール評論

ネパール研究会

印英共同声明のネパール憲法言及,ネ政府抗議

訪英したインドのモディ首相が11月12日,キャメロン首相と会談し,共同声明を出したが,その中にネパール憲法への言及があったため,ネパール政府が強く反発,外務省が抗議声明を出した。
 * 新華社配信。”Nepal objects to India-Britain joint statement,” Nepal National, 16 Nov.; “Nepal responds to UK-India joint statement,” globaltimes.cn,16 Nov.

1.印英共同声明の関係部分
「両国[印英]首相は,ネパールが残された諸問題を解決し,政治的安定と経済成長を推進できるような,永続的にして包摂的な憲法をつくることの重要性を強調した。」

2.ネパール外務省の公式発表[要旨]
「ネパールは,約8年間の厳しい民主化努力ののち,選挙により成立した制憲議会において新しい民主的にして包摂的な憲法を公布することができた。」

「ネパールは,平和・安定・繁栄のために国際社会が提供してくれた支援と善意に敬意を表する。しかしながら,憲法制定は一国の国内問題であり,ネパールは,その国内問題にネパール自身で対処できる,と強く認識している。」

3.ネパール外務省筋の抗議
この件について,ネパール外務省筋は,新華社の取材に次のように述べた。

「ネパールは,主権国家として新憲法を採択したのであり,他のどの国であれ,この新憲法の内容について,あれこれ指示すべきではないと信じている。われわれの国内問題への,いかなる外国の外からの介入をも許容できない。」

4.ナショナリズムの高揚
ネパールでは,マデシ反憲法闘争の長期化とともに,憲法を制定した諸勢力の側のナショナリズムが高揚している。

たしかに憲法制定支援と称して自分たちの作りたい憲法をネパールに押し付けてきた西洋を中心とする国際社会の態度は,ネパールの自尊心を著しく傷つけるものであった。一外国人にすぎない私ですらいくども腹が立ったのだから,誇り高きネパール知識人の多くが不満と怒りを鬱積させてきたであろうことは,容易に想像がつく。

そうした不満と怒りが,いまナショナリズムの高揚という形で噴出し始めたのではないだろうか? もしそうだとすると,これは危険な兆候とみてよいであろう。

▼ネパール外務省HP
 151117
 ■外務大臣はナショナリズムの旗手カマル・タパ(写真右)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/11/17 @ 03:54