ネパール評論

ネパール研究会

苦境のオリ首相

ロイターが「ネパール首相,憲法危機で孤立し降板か」(2月4日)という,いささかセンセーショナルな見出しの記事を配信している。
 * Ross Adkin, “Isolated Nepal PM could be toppled by constitution crisis,” Reuters,4 Feb 2016.

記事によると,オリ内閣は,タライ紛争の解決とインド「非公式封鎖」の解除を約束してきたが,それらは一向に解決されそうにない。タライでは夏以降約50人もの紛争犠牲者を出しているし,カトマンズでは,依然として,ガソリンやガスのため長蛇の列に並ぶか高価な闇取引に走らざるをえない。

そもそも,オリ内閣は,確信的王党派と新憲法署名拒否マデシ党首とを副首相に据える内部分裂的体制だ。しかも,UMLと連立を組み政権を支えているマオイスト(UCPN)の中からも,オリ首相の政治姿勢への批判の声が高まってきた。

現状打開のカギを握るとみられているインドとの関係は,政府高官レベルでは改善に向かいつつあるが,問題は強硬発言を続けるオリ首相。インドでは「オリ降板は近い」と噂されているという。

こうした状況の中,議会第一党の野党コングレス(NC)が3月,党大会を開催し,新体制を発足させる。このNC新執行部が,オリ内閣に対しどのような立場をとるか? オリ内閣が早急に現状を打開できないと,これから先,政権運営はますます厳しくなりそうだ。

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/02/05 @ 14:57

カテゴリー: インド, 憲法, 政党, 政治

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