ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

蘭州発加徳満都行,一番列車発車

中国甘粛省蘭州から5月11日午後,加徳満都(カトマンズ)に向け,一番列車「蘭州号」が発車した。43車両にコンテナ84個積載。ラサ経由でシガツェまで行き,そこでトラックに積み替え,キロン経由でカトマンズまで運ばれる。定期運行。

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  ■蘭州号(*1)

新華社掲載の写真を見ると,西蔵鉄道の線路は堅固な造りだし,カトマンズ行車両の編成もなかなか立派。さすが,中国はすごい。いまや鉄道大国だ。鉄道建設国際入札で日本が負けるのもむべなるかなだ。

といっても,まだシガツェから先が未完成のため,蘭州からカトマンズまで10日間もかかる。いまのところ,経済的にはあまりメリットはないだろう。しかし,チベット鉄道延伸計画は進んでおり,カトマンズまで結ばれるのも,そう遠い先のことではあるまい。そうなれば,中ネ間の交通は格段に便利となり,コストも下がり,人と物の往来が劇的に拡大するだろう。5月11日発車の一番列車は,その露払い,前祝といったところであろう。
  (注)中国各地からの鉄道ツアーはすでに多数売り出されている。
   160515■西安中信国際旅行社HP

さらにもう一つ,当面,これよりもはるかに重要といってよいのが,加徳満都行一番列車発車のもつ政治的な意味(*2)。先の連立組み換え首相交代騒動は,裏でインドが画策していたといわれている。インドは,現行憲法堅持で親中・反マデシのオリ政権を嫌い,コングレスに働きかけマオイストをUMLから引き離し,憲法改正・親印・親マデシのNC=マオイスト政権をつくらせようとした。この政権転覆のたくらみは,一時成功するかに見えたが,マオイストがオリ首相に「9項目合意」を呑ませることによりUMLとの連立継続をとったため,頓挫してしまった。

この間,オリ首相は,バンダリ大統領の訪印をドタキャンし,さらに駐印大使の召還さえも断行してしまった。これは重大な決断であり,対印関係はいま危機的な状況にあるといっても言い過ぎではあるまい。

そのような中,カトマンズに向け,中国から一番列車が発車! それは中ネの時間距離的接近をビジュアルに誇示するものであると同時に,当然,それは両国の政治的接近をも世界に向け強烈にアピールしている。新華社掲載の「加徳満都行蘭州号」写真の,それは,それは巨大なこと! 

といっても,むろんインドが,ネパールにとって,依然として地理的にも文化的にも最も近い国であることに変わりはない。地政学的に,ネパールはインド勢力圏内にある。そのネパールへの中国の急接近――ネパール政治に何かこれまでとは異なることが起こる可能性はある。それが何かは,まだわからないが。

*1 Liang Jun, “China opens its first combined transport service to Nepal,” People’s Daily Online, May 12, 2016.
*2 SANJEEV GIRI, “Beijing ‘sends’ freight train for Nepal,” Kathmandu Post, 2016-05-13.
*3 Ananth Krishnan, “China opens new trade route to Nepal amid India tensions,” India Today, May 12, 2016.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/05/15 @ 11:20

カテゴリー: インド, 経済, 外交, 旅行, 中国

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