ネパール評論

ネパール研究会

英国人画家,デモ参加容疑で逮捕(1)

カナダ人の次は英国人! またもや,政治活動を理由に,外国人がネパール警察に逮捕された。偶然ではない。狙い撃ちであり,外国人への警告である。

逮捕されたのは,英国人画家マーチン・トラバース氏(41歳)。3月3日観光ビザ(3か月)で入国し,5月15日シンハダルバールにおいて,政治活動容疑で逮捕された。

この日(5月15日),政府庁舎前シンハダルバールでは,マデシ・ジャナジャーティ連盟(29党参加)が,彼らの権利が十分に認められていないとして,2015年憲法に反対する抗議活動を繰り広げていた。トラバース氏は,その場にいて,逮捕されたのである。

警察によれば,トラバース氏は,マガラ自治区スローガンをもち反憲法ピケに参加していた。観光ビザでは政治活動は認められていない。トラバース氏の行為は入管法違反であり,したがって警察は彼を逮捕したというのである。

これに対し,トラバース氏は,こう弁明している。自分は,シンハダルバールで写真を撮っていた。そこに,誰かが後ろからやってきて,抗議プラカードを前に出した,あるいは首にかけた(状況不明瞭)。ただそれだけ。自分はデモには参加していない,と。

警察とトラバース氏,いいずれの言い分が正しいのか,いまはわからない。が,15日のシンハダルバールには,かなり多くの外国人がいて,何人かは抗議行動に参加しているように見えたという情報が多数寄せられ,そのような写真もネットに出回っているらしい。

むろん,こうした政治活動の場に外国人が居合わせるのは,従来から決して珍しいことではなかった。単なる通りすがりや物珍しさからの見物もあれば,人権要求や民主化運動への共感から,多かれ少なかれ関与する形で,その場に居ることもあった。しかし,そうした人々が,警察に狙い撃ちで逮捕されることは,これまではまずなかったのではないかと思う。

ところが,今回は,ツイッター発言を理由にカナダ人が逮捕されたのにつづき,反憲法活動参加を理由に英国人が逮捕された。これは,在ネ外国人に対する,ネパール政府の姿勢の変化と見るべきだろう。内務省ヤダブ・コイララ報道官も,こう明言している――「外国人の,そうした違法行為は厳しく取り締まっていく。」(*2)

  160517a■トラバース氏FB(5月9日)

*1 India Today, “UK national arrested in Nepal over anti-Constitution protest,” May 16, 2016
*2 KAMAL PARIYAR, “BRITON ARRESTED WHILE PARTICIPATING IN SINGHA DURBAR PICKETING,” Republica, 17 May 2016
*3 “Briton held for ‘participating’ in Sanghiya Gathabandhan’s protest.” Kathmandu Post, May 16, 2016
*4 “‘Briton’ arrested for taking part in Singha Darbar picketing,” The Himalayan Times, May 16, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/05/17 @ 22:54

カテゴリー: 憲法, 政治, 民主主義, 人権

Tagged with ,