ネパール評論

ネパール研究会

仏陀と印中の三角関係

仏陀をめぐる印中の三角関係がこのところ怪しくなってきた。信仰というよりは,カネと政治の思惑から。

インド側は,釈迦が育ったとされるカピラバストゥ城はネパール側のティラウラコートではなく印側のピプラワにあると主張し,ブッダガヤを目玉とするインド仏教遺跡巡りを宣伝し,そこに釈迦生誕地ルンビニを組み込もうとしている。

これに対し,中国側はネパール政府に急接近し,ルンビニ空港建設やチベット鉄道延伸により中国人旅行客をルンビニ付近に大量に送り込もうとしている,といわれている。ネパール=中国主導のルンビニ仏教遺跡巡りだ。

この仏教遺跡をめぐる印とネ中の争いは,直接的には観光開発の主導権争いだが,それは同時にネ印国境付近への中国進出をめぐる地政学的な争いでもある。

仏様の「現世利益」利用。バチ当たりなことだ。

160607■The Upper Ganges Valley(http://www.buddhanet.net/)

*1 ELLEN BARRY, “India and Nepal in Not-Very-Enlightened Spat Over Buddha’s Childhood Home,” New York Times, JUNE 1, 2016
*2 “Trans-national route from India to Nepal on the anvil: Buddhist circuit,” Kathmandu Post, Jun 1, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/06/07 @ 16:37