ネパール評論

ネパール研究会

選挙直前の政党再編,ネパール政界大混乱

日本同様ネパールでも,選挙を前に政党の再編が進んでいる。ネパールの場合,与野党を問わず,ほぼ全政党が関与しており,日本以上に大幅で劇的だ。ネパール政界は伝統的に三大勢力からなる三極構造だったが,11月26日/12月7日の連邦議会選挙を転機に,二大勢力からなる二極構造に移行するかもしれない。

そもそもの発端は,10月3日の共産党系諸党による「6項目合意」の突然の発表だ。それによれば,UML(議会第2党)とマオイスト(議会第3党)と「新しい力」(バブラム・バタライ党首)の3党が中心となって選挙のための統一戦線をつくり,他の共産党系諸党にも参加を訴えるという。しかも選挙後には3党が合併し,一つの新たな共産党となる。スローガンは「社会主義志向の繁栄」とナショナリズム。

UMLは現在野党だが,マオイストの方は政府与党。それなのに,なぜこの2党が手を結ぶことになったのか? UMLについては,9月の第2州地方選挙で惨敗したことが最大の理由とされている。マオイストについては,与党でありながら,プラチャンダ党首が連立相手のNCにより冷遇されたからだといわれている。これらがどこまで事実かは定かではないが,いずれにせよこの選挙直前の連携が分かりにくいものであることは確かだ。特にマオイストについては,与党でありながら野党と組むことにし,しかも選挙終了までは政権内にとどまりデウバ首相(NC)を支えるというのだ。ややこしい。

 

この共産党系諸党統一への動きに対し,NCの側も10月5日,「民主連合」の結成を発表した。これには右派のRPPやマデシ系諸党が参加する予定。

このNC中心の「民主連合」が成立すれば,議会多数派となり,マオイスト閣僚を罷免し,「民主連合」の議員と入れ替えることもおそらく可能だろうが,デウバ首相はいまのところマオイスト閣僚の辞任は求めない方針のようだ。1月余で選挙だから仕方ないとはいえ,やはりわかりにくい。

  

一方,多くの中小政党にとっては,ネパール政界の二極化への動きは,踏み絵でもある。年末選挙までに,いずれの側に与するか,態度決定を迫られることになろう。

このような二大政党化への動きは,もしこのまま進行するとすれば,どのような意味を持つことになるのか? 一方には,現在の多党乱立よりも政治が安定し発展に寄与するという見方があるが,他方には,二大政党制になっても高位カースト寡占に変わりはなく,実際の政治は大差ないという見方もある。いずれが妥当かは,いまのところ分からない。

国際的には,もう少しはっきりしている。共産党系諸党連合は親中的,NC中心の「民主連合」は親印的。インド諸紙が,早くも,このような見方に立ち,警鐘を鳴らしている。

ネパール連邦議会選挙は,日本以上にドタバタの合従連衡だが,長い目で見ると,この選挙を機にネパール政治の在り方が大きく変わるかもしれない。経過を注視していたい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/10/09 @ 21:42

カテゴリー: マオイスト, 選挙, 政党

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