ネパール評論 Nepal Review

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オリ首相の強権化,米が警告

アメリカ国務省のブリンケン副長官が1月22日夕方(ネパール時間),オリ首相に電話し,間接的な表現がら,統治強権化への危惧の念を伝えた。

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ブリンケン副長官は,具体的な事件を直接名指ししていないが,22日夕方の電話だから,当然,その日のモランでの警官隊銃撃事件を念頭に置いていることは明白だ。(参照:マデシとUMLが衝突,3人死亡

米国務省HP(1月22日)記載の電話会談要旨によれば,ブリンケン国務副長官はオリ首相に対し――
 (1)「ネパール人すべての利益を考えること」
 (2)「一方的な手段をとらないこと」
を要請した。

たしかに,いくらなんでも自分の党(UML)の集会を守るため,反対派マデシのデモ隊に向け警官に実弾を発射させ,3人を殺し,十数人に負傷を負わせるのは,過剰防衛だ。アメリカが警告するのはもっともである。

これは深刻な大事件だが,いまのところネパール・メディアはあまり大きくは報道していない。サッカーチーム帰国報道の方がはるかに大きい。メディアも,変になりかけているのではないか。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/01/23 at 19:41

カテゴリー: 民族, 民主主義

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大統領にも国会議長にも,女性議員選出

世界最新憲法国ネパールが,大統領と連邦議会(立法議会)議長に、いずれも女性議員を選出した。快挙!

1.OG・マガル議長
ネパール立法議会は10月16日,無投票で統一共産党マオイスト(UCPN-M)議員のオンサリ・ガルティ・マガル議員を議長に選出した。ネパール初の女性議長。

マガル議長は,1977年ロルパ生まれ。人民戦争に初期から参加。和平後,ロルパ選出議員。UCPN政治局員。青年スポーツ大臣。前副議長。夫は,UCPNのバルシャマン・プン書記。

議長選挙は,ネパール会議派(NC)が対立候補を出さず,UCPNとRPP-N推薦のマガル氏が無投票で選出された。16日の時点では,まだNC・UML(ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義派)・UCPN三党協調体制の継続が模索されていたからであろう。なお,副議長には,国民民主党(RPP-N)のガンガ・プラサド・ヤダブ議員を選出。

  151029■OG・マガル議長(同氏FB)

2.BD・バンダリ大統領
10月28日の大統領選挙では,UMLのビディヤデビ・バンダリ議員が,第二代大統領に選出された。議長選挙のわずか12日後のことだが,9月20日にマデシやインドの反対を押し切り新憲法が公布されたこともあり,諸政党の関係が流動化してしまっていた[公布日誤記訂正]。NCは下野を再確認し,党幹部のクル・バハドゥル・グルンを対立候補として擁立した。結果は次の通り。

 BD・バンダリ(UML) 327
   UML,UCPN,RPP-N,MJF-D,CPN-MLほか
 KB・グルン(NC) 214
   NCほか
 *議員総数597, 投票総数549,無効8,欠席48(マデシ系ほか)

BD・バンダリ大統領は,1961年ボジプル生まれ。学生運動を経て,GEFONT女性局長など歴任。UMLカトマンズ選出議員。防衛大臣。UML副議長。女性権利実現に努力。夫は,ネパール共産党運動の指導者の一人マダン・バンダリ(1993年没)。党内では,オリ首相(UML議長)に近い。

  151029a■BD・バンダリ大統領(UML HP)

3.UML=UCPN=RPP-N体制
これで,大統領=UML,首相=UML,議長=UCPNとなり,新政府は名実ともにこれら二大政党主導となった。これら2党に比べ,RPP-Nは一歩下がるが,それでも副首相兼外務大臣と副議長,大臣(1)を出しているので,新政府内においてキャスティングボートを握りうる位置にある。

これに対し,マデシのMJF-Dは,副首相と国務大臣(2)を出しているものの,この布陣では,あまり大きな発言権はもてそうにない。中国からの石油輸入にどう対処するか,さっそくその立ち位置が試されることになった。

いまタライ地方では,中国の対ネ石油輸出がマデシ運動への敵対行為とみなされ,反中国感情が高まっている。反中国デモが始まり、中国国旗が焼かれたという報道もある。

この新たな局面に,新政府はどう対処するのか? 真っ先に「踏み絵」を踏まされそうなのはMJF-Dだが,他の3与党とて難しい選択を迫られることに変わりはあるまい。

ネパールにおける中印の代理戦争といった最悪の事態だけは,何としても回避していただきたいものだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/10/29 at 23:09

カテゴリー: マオイスト, 議会

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憲法骨格案も課題一覧も作成できず,CPDCC

「憲法に関する政治的対話と合意形成委員会(CPDCC)」(バブラム・バタライ議長=UCPN)は,憲法骨格案を10月16日までに,それができない場合は,投票用課題一覧を17日までに,制憲議会に提出することになっていたが,なんと驚くなかれ,バブラムCPDCC議長は,そのいずれもしなかった,いやできなかった。ネパールでは,紛糾すればするほど,合意形成機関の名前が長~くなり,合意形成期間も長~くなる。(参照:憲法基本合意,また延期

141021 ■バブラム・バラライTwitter

バブラムCPDCC議長は,議会への答申の代わりに,最後の「最後の話し合い」を求め,その結果,今日10月21日と明日22日に,それが行われることになった。コイララ首相と主要3党代表の出席が要請されている。

一方,制憲議会「憲法起草委員会」のクリシュナ・シタウラ議長(NC)は,憲法起草には最低1か月はかかるので,憲法骨格案の答申が11月1日までになければ,1月22日の憲法制定・公布には間に合わない,と警告している。

10月21~22日の最後の「最後の話し合い」がどうなるか予断を許さないが,現在のところ,CPDCC答申が11月1日までまたまた延期される可能性が高い。

それでも答申がない場合はどうするか? NCとUMLは,連邦制,政府形態,司法,選挙制度など,意見の分かれる部分については議会での投票採決を主張している。議会多数を制しているから,当然といえよう。

これに対し,マオイスト(UCPN-M)を中心とする22党連合は,「12項目合意(2005)」などを引き合いに出し猛反対,投票に持ち込めば,街頭に出て実力阻止を図る構えだ。

この点については,すでに指摘したように,合意形成も投票採決も実際には困難な状況だ。(参照:憲法基本合意,また延期

そこで再び注目され始めたのが,10月8日復活した立憲政府の上の政治的「政府」たる「高次政治委員会(HLPC)」(プラチャンダ議長=UCPN)。議会内の正規手続きでは決着をみなければ,結局,議会外の主要諸勢力の手打ちで政治的打開を図る。豪傑プラチャンダならやれそうな気もするが,たとえ成功しても,それは一時的で,民族アイデンティティ政治をいつまでも封じ込めるのは無理だろう。

結局,憲法制定・公布をまたまた延期し現状維持を策すのが,最も現実的な解決策ということになりかねない。厄介なことだ。

* Cf. Kathmandu Post & Nepalnews.com,19 Oct; Ekantipur & Republica,20 Oct.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/10/21 at 11:34

NC=UML連立協議,はや紛糾

コングレス党(NC)と統一共産党(CPN-UML)は,連立を組み,1年以内の新憲法制定を目指すはずだったのに,スシル・コイララNC議長を首相に選出したとたん,内務大臣ポストをめぐって紛糾,いつものことながら,これでは先が思いやられる。

1.内務大臣ポスト「紳士協定」
NC=UML連立については,先述のように「7項目合意」がある。その中の第7項において,両党は制憲議会議長をUMLとすることに合意しているが,内務大臣や他のポストへの言及は,そこにはない。

ところが,UMLは,首相選協力への見返りとして内相はUMLとする「紳士協定」があったとして内相ポストを要求,もしこれが受け入れられなければ,連立協議には応じないと強硬に主張している。

これに対し,NCは,そのような「約束」はないとして,UMLの内相ポスト要求を頭から拒否している。さらに,単に約束がなかったからだけでなく,そもそも議院内閣制では内務大臣職は決定的に重要であり,もし内相が他党だと,首相は指導力を失い「レイム・ダック」に陥ってしまうとも述べ,UMLの内相ポスト要求を批判している(Himalayan, 14 Feb)。

2.「紳士協定」の有無
この内相ポスト「紳士協定」については,文書が出てくれば決着がつくが,そうでなければ,要するに「密約」であり,その有無は水掛け論とならざるをえない。

ただ,状況を考え合わせると,そのような「紳士協定」ないし「密約」があった可能性は否定できない。NCは選挙で大勝したが,単独過半数ではなく,UMLかマオイスト(UCPN-M)の協力を得ざるをえないからだ。

首相選に当たって,NCは,当然ながら,UMLとマオイストを天秤にかけ,できるだけ有利になるよう連立協議を進めた。ただ,マオイストとはイデオロギー的に隔たりが大きすぎ,結局,UMLと組むことにしたのだろう。

その連立協議の中で,大統領については明確な合意ができ,「7項目合意」において大統領はUMLとする,と明記することができた。ところが,内相については,そのような合意にはいたらず,しかしUMLの支持は首相選に不可欠だったので,おそらく何らかの形で“内相はUML”をにおわせ,これによりコイララ候補への投票の約束をとりつけたのであろう。

しかし,もしそうだとすると,これは切羽詰まったときの「玉虫色」合意にすぎず,しょせん弥縫策,すぐ暗礁に乗り上げてしまう。

3.内相の魅力
ネパールにおいて内務大臣がこれほど重視されるのは,その権限が強大だからである。警察(6万6千),武装警察(3万6千),治安部門,入管,刑務所など多くの機関を指揮し,その管轄権は地方の隅々にまで及ぶ。当然,巨額の予算も握る。

特に今回は,コイララ首相が公約しているように,地方選挙が半年以内に実施される可能性が高い。NCは,UMLの内相の下での地方選を忌避しているのだ。

「リパブリカ」によれば,NCは,バンデブ・ゴータムUML副議長が内相になることを強く警戒している。ゴータムは,内相として1997年地方選を実施し,UMLを大勝させた。NC,特に地方活動家は,その再現を恐れ,UML内相に強硬に反対しているという(Republica, 14 Feb)。

4.コイララ政権の前途
コイララ政権の前途は,NC大勝とはいえ,楽観はできない。ポスト争いは内相に限らない。他の大臣,あるいは大使なども,激しい争奪戦の的となる。

もし何とかポスト配分ができ,NCがUMLと組むことになっても,その場合は,おそらくマオイストが主流プラチャンダ派と急進バイダ派との再統一に向かい,議会内外での対立が激化するであろう。一方,もしUMLとの連立協議が決裂すれば,NCはマオイストと組まざるをえないことになる。

さらに,もし三大政党が三すくみとなれば,王党派のRPPが漁夫の利をえ,勢力を拡大することになるだろう。

コイララ首相は,公約通り,1年以内に新憲法を制定できるだろうか? 前回の観念先走りに懲りて,今回は制憲議会任期が2倍の4年となった。まだ先,4年もある。いよいよとなったら,また考えよう,ということにもなりかねない。

140214 ■UML指導体制(UML-HP)
カナール議長(अध्यक्ष),MK・ネパール長老指導者(बरिष्ट नेता),オーリ指導者( नेता),ゴータム副議長(उपाध्यक्ष),バンダリ副議長((उपाध्यक्ष),ポカレル書記長(महासचिव)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/14 at 19:50

制憲議会選挙2013(17):ノーサイドなき選挙

(1)マオイストの選挙ボイコット宣言
開票が始まったばかりだというのに,劣勢のマオイスト(UCPN-M)は21日,早々と選挙ボイコットを決め,開票停止を要求,開票所から党立会人を退去させた。この選挙には「陰謀」が働いており,結果は「人民の期待に反するもの」であり,したがって制憲議会がつくられても参加しないという(Republica, Nov.21)。

これに対し,優勢のコングレス(NC)と共産党統一マルクス・レーニン派(UML)は,マオイストを激しく非難,選挙の公平を唱え,結果の受け入れを強く要求している。

一方,反選挙33党連合を主導してきたバイダ派マオイスト(CPN-M)は,開票直後からのこの大混乱を当然と受け止め,33党連合の反選挙運動の正当性を改めて力説し,今後への自信を示した。

マオイスト劣勢は,図らずも選挙前に分裂したマオイスト2派を急接近させることになった。両派マオイストが再統合し,ジャングルに戻ることになれば,ネパール平和構築は元の木阿弥,振り出しに戻ることになる。もっとも,国内外の圧力は強く,マオイスト幹部がいまや「有産階級」となったこともあり,その危険性は,いまのところ,それほど大きくはない。あれこれ駆け引きをしつつも,結局は,マオイストは選挙結果を受け入れざるをえないのではないであろうか。

131122e ■小選挙区開票速報(22日午前)

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 ■市内要所を他党に制圧されたマオイスト。アサン/イカナラヤン付近/インドラチョーク

(2)コングレスの無規律
一方,予想外の好調に,コングレスは21日朝から大はしゃぎ,車やバイクに旗を立て,大音響でプカプカドンドンやりながら,街中を走り回っている。

特にキルティプルは,コングレスのラジェンドラ・クマール・KCが当選,それにUMLのスレンドラ・マナンダールが続き,マオイスト革命英雄プラチャンダたるプシュパカマル・ダハール議長は,まさかの第3位。コングレスが喜ぶのは当然だが,それにしても少々やり過ぎのような気がする。

惨敗した革命英雄陣営の前で,勝利に浮かれ,これ見よがしに大はしゃぎで行進し,投票結果を受け入れよと叫ぶ。こんなことをされては,敗者側は頭に来て,石の一つでも投げてやりたくなる。そして,もし本当に石でも投げたら,たちまち興奮した両派の大乱闘となり,止めようがなくなる。

それをおそれ,治安部隊が多数出動し,要所を警戒している。まるで戒厳令下のようだが,たとえどのように警戒しても,興奮した群衆に火がつけば,もはや止めようがない。今日のキルティプル外周道路では,そのような恐怖を覚えた。

コングレスは,もっとも由緒ある政党なのだから,もう少し大人の振る舞いを身につけてほしい。といっても,敗者へのいたわりとか惻隠の情といった,日本的なウェットな感情を引き合いに出して批判しているのではない。ネパールの選挙に不足しているのは,それとは全く異質のドライなフェアプレーとノーサイドの精神である。

フェアプレーとノーサイドは,世界に冠たる政治的国民の英米が誇る精神である。他のものは別として,これは文句なしに賞賛すべき精神であり,特にネパールは是が非でもこれを学び取る必要がある。

すなわち,いったんゲームを始めたら,勝利を目指して,共通のルールの下でフェアに,全力で最大限戦うが,ゲームが終われば,敵味方なしのノーサイド。勝敗は厳然としてあり,その結果は誰もが認めなければならないが,ゲーム終了=ノーサイドとなれば,両者とも全力で戦った者として健闘をたたえ合い,尊敬し合う。

選挙は,政治的ゲームの典型であり,いわば政治のスポーツ。要するに「遊び」だ。政治の場で,真剣に全力で戦うゲーム,それが選挙だ。選挙に,フェアプレーとノーサイドの精神が不可欠なのは当然だろう。

このフェアプレーとノーサイドの精神をどう育成するか? 投票箱や投票用紙,選管用コンピュータや四駆車――そんなものの援助より,ラグビー普及支援の方が早道かもしれない。

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 ■キルティプル門前広場のNC集会(21日朝)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/11/22 at 13:21

UML除外「挙国」内閣

バブラム首相は5月6日,NCシラウラ書記長を副首相に任命した。次期首相の含み。

 ・首相: バブラム・バタライ(M)
 ・副首相:ナラヤンカジ・シュレスタ(M)
 ・副首相:ビジャイ・ガッチャダル(UDMF)
 ・副首相:シタウラ(NC)

今のところUMLは参加せず,内閣はM=NC=UDMF連立に留まる。

このまま非挙国「挙国」政府で新憲法制定を強行するか,それともUMLがどこかで妥協し参加するか? 先行き不透明。

一方,マオイスト急進派のバイダ派は,「挙国」政府をインドの傀儡と非難。学生組合ANNISU-Rも6日午後,学生運動の名所トリチャンドラ校前で,反「挙国」政府デモを繰り広げた。

UMLが不参加を貫けば,たとえ不倶戴天の旧敵であれ,両派が手を結び,強力な反政府勢力が形成されるだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/05/07 at 15:14

カテゴリー: 議会, 政党

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UMLの連邦制案

統一共産党(UML)が,8州案と12州案をカナル党首に提出した。審議後,党の案を正式採択の予定。

■州区分
 8州案: タライ3州,丘陵・山地5州
 12州案:タライ4州,丘陵・山地8州

■階層
 連邦――州――地域

■自治政府
 自治都市政府:10
 町政府:150
 村政府:900
 特別自治区:5(シェルパ・サガルマタ,チェパン,スヌワル,ダヌワル,西ヒマリ)

■自治体内の多数派集団の優先権:認めない

■連邦からの分離権(離脱権):認めない

まぁ,はっきり言って,どうでもよい案である。他の連邦制案も同じこと。こんなくだらないことで,カネ(税金)と時間を浪費することは,全くの無駄。ばかげている。単一国家の地方自治の拡大・充実の方が,はるかに安上がりで建設的だ。

諸悪の根源は,いうまでもなく欧米,とくに西欧の連邦制原理主義者にある。民族社会主義をはじめ,アイデンティティ政治で殺し合い,地獄を見てきた自分たちの悲惨な過去を,都合よくけろりと忘れ,ネパールに民族アイデンティティ政治を強引に持ち込んでいる。ネパールのことより,EU分裂の心配の方が先ではないか?

* Republica, Feb15.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/02/15 at 14:57

カテゴリー: 憲法

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