ネパール評論

ネパール研究会

ネパールの選挙,様変わり

1.「歴史的な平和的選挙」
ネパールの選挙が様変わり,いくつかの点で日本以上に「現代的」となった。

もちろん,ネパールの選挙につきものの暴力的選挙妨害は,内務省が30万人にも及ぶ治安要員を動員したにもかかわらず,あちこちで発生した。立候補者やその支持者に対する暴力,あるいは選挙そのものを妨害するための投票所や投票箱に対する爆発物や毒物による攻撃など。

また,国会選挙と州会選挙の同時投票に加えて多党乱立,さらには識字率(特に高齢者識字率)がなお低いこともあって,選挙(投票)方法が複雑となり,無効票が増えることが懸念されている。パンチタル郡選管が11月11日実施した模擬投票によれば,実に52%が投票の全部または一部が無効だったという(*2)。

しかしながら,こうした問題はあったものの,全体としてみると,今年の選挙(国会,州会,地方自治体)は,予想以上に順調であったといえる。投票率も高かった(11月26日選挙の投票率は65%)。

国連のグレーテス事務総長も12月8日,ネパールの「歴史的な平和的選挙」を歓迎する談話を発表した。事務総長は,この選挙を2015年憲法規定の連邦制実現への歴史的前進として高く評価し,ネパールの政府,政党,市民社会が包摂代表制政治の実現に向けさらに努力を継続することを期待し,そのための支援を国連は惜しまないと約束した(*1)。

2.選挙の情報化
ネパール選挙の様変わりは,なんといっても情報化。選挙情報化は前回の2008年制憲議会選挙のころから急速に進み始めたが,今回は,日本でネット情報を見ているだけでも,その激変ぶりがよく見て取れる。

ネパールのネット・サイトを見ると,マス・メディアばかりか,国際機関や民主化支援NGOなど,様々な機関が報道合戦を繰り広げている。そこには,お役所の選挙管理委員会も,堂々,参戦している。ネパールでも選挙情報があふれ,選挙は一挙にショー化,イベント化してきた。(テレビも選挙報道合戦を繰り広げているのであろうが,日本からはその実情はよくわからない。)

ネパールでも選挙は万人に見られるようになった――このことがネパール選挙激変の大きな要因の一つではあるまいか。


■選挙管理委員会HP(12月11日)/ Gorkhapatra(12 Dec)


■Kathmandu Post(9 Dec) / Republica(9 Dec)

■Annapurna(9 Dec)

*1 “SECRETARY-GENERAL STATEMENTS AND MESSAGES,” https://www.un.org/press/en/2017/sgsm18820.doc.htm
*2 “52pc votes invalid in mock election,” The Himalayan, November 19, 2017
*3 RAJNEESH BHANDARI and KAI SCHULTZ, “Violence Flares as Nepal Heads to Landmark Elections,” NOV. 25, 2017
*4 “Voting polls experience violence during Nepal’s historic vote,” AFP(https://www.enca.com/world/voting-polls-experience-violence-during-nepals-historic-vote), 26 November 2017
*6 “Voters in Nepal undeterred by election-related violence,” Al Jazeera, 8 Dec 2017
*7 Prabin Manandhar, “Electoral Violence And Security In Nepal,” Spotlight, Nov. 27, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/12/11 @ 18:57

カテゴリー: 選挙, 情報 IT, 政党