ネパール評論

ネパール研究会

キリスト教攻撃激化と規制強化(1)

ネパールでは,ネパール共産党(NCP)政権成立以後,特に3月以降,キリスト教に対する攻撃が激化し,規制も強化されてきた。教会施設の破壊,信者の逮捕や国外退去処分などが,あいついでいる。

ネパールの宗教別人口は,国勢調査(2011年)によればヒンズー(ヒンドゥー)教81.3%,仏教9%,イスラム教4.4%,キリスト教1.4%,その他3.9%であり,キリスト教はごくわずかの少数派だが,これは意図的過小評価であり,実際には3~7%もいるとさえいわれている。いずれが正しいか,にわかには判断できないが,いずれにせよキリスト教徒がネパールにおいて急増し,教会関係者の間ではネパールが「世界でキリスト教徒増加率の最も高い国」の一つとして注目されていることは事実である。

この春以降のキリスト教規制強化や攻撃激化が,諸状況を考え合わせるなら,キリスト教徒のこの急増と関係していると見て,まず間違いないであろう。そこで,以下,報道記事に基づき,この数か月のキリスト教規制強化・攻撃激化につき概略を紹介する。なお,キリスト教系メディアが多かれ少なかれ教会側から報道していることは,言うまでもない。また,参考のため,ヒンズー社会の側からのキリスト教布教活動批判記事の要旨も付記しておく。

 ▼キリスト教取締りと教会攻撃
03.22 女性キリスト教徒,宗教感情毀損容疑で逮捕。
04.28 カトリック教会(バンケ郡)放火。
04.30 改宗強要容疑でキリスト教徒2名逮捕(チトワン郡)。
05.04 キリスト教徒を自宅で逮捕。容疑不明。
05.08 女性キリスト教徒3名,買収による改宗勧誘容疑で逮捕。
05.09 聖歌を路上で歌ったキリスト教徒逮捕。
05.10 ヘブロン教会(パンチタル郡)放火。
05.10 エマニュエル教会(ドティ郡)放火。
05.11 エマニュエル教会(カンチャンプル郡)放火。
05.13 マヒマ教会(カイラリ郡),爆破。
05.19 キリスト教系孤児院閉鎖,事務長逮捕。
05.19 キリスト教徒2名,宗教感情毀損容疑で逮捕(モラン郡)。
06.15 女性キリスト教徒,布教中に逮捕。
07.06 外国人キリスト教徒夫妻,教会活動を理由に国外退去処分。
07.19 「ネパール全国クリスチャン連盟」書記長,襲撃(カトマンズ)。
 (注)一部,日付異同や重複があるかもしれない。


■Converge(12/28/2015)/Open Doors Australia(08/05/2018)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/08/05 @ 18:05

カテゴリー: 宗教

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