ネパール評論

ネパール研究会

老々介護(16): アナログ回帰

高齢認知症者介護は,日々新たな問題への挑戦であり,たいへんは大変だが,面白くもある。どうして,こんな突拍子もないことをするのだろう? なぜ,こんな風になるのだろう? などなど。常識をはるかに超える行為や変化に驚き,考えさせられる毎日である。

その一つが,デジタルからアナログへの認識方法の変化。これに最初に気づいたのは,日時を電光数字で表示する置時計があるのに,それを使わず,針で時刻表示する目覚まし時計を持ち歩くようになった時のこと。

ベッドの横にデジタル数字電光表示時計があり,夜間もよく見えるのに,寝るときにはわざわざ針付き時計をもってくるようになった。テレビの横にもデジタル数字電光表示時計が置いてあるが,それでもやはり針付き時計を持ってくる。

当初,これは認知症が進み,なじみの旧式アナログ時計へのこだわりが昂進したため,それを持ち歩くようになったのだ,と思っていた。しかし,様子を観察していると,どうもそうではないらしいことに気づいた。実際には,デジタル時計の表示する数字が,いま現在の時刻としては認識されなくなったからのようだ。

母は高齢だが,カナや数字はむろんのこと,相当難しい漢字であっても,ほぼ問題なく読解できる。テレビも,字幕――難聴のため文字表示設定――をみて,楽しんでいる。だからデジタル表示時計の数字が読めないはずはない。数字は読め,理解できている。

ところが,それにもかかわらず,デジタル時計が刻々表示する電光数字を,いま現在の時刻としては認識できていないらしい。観念的なデジタル数字を生活の場で使う具体的なアナログ時刻へと変換する神経回路が,どこかでプツンと切れてしまったらしい。

他方,針式のアナログ時計は,時刻を具体的な図形として表示するからなのか,何の問題もなく使用できている。「時間」の観念それ自体はまだ健在であり,生活は時間によりほぼ規律できている。これから先も,生活に必須のこの時間認識が何とか維持できればよいのだが。

というわけで,100円ショップに行き,針付きアナログ時計を数個,買ってきて,家のあちこちにおいている。いずれも正確無比! いまや時刻は100円時計でお手軽に知ることが出来るのだ。

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 ■デジタル数字表示時計/アナログ針式時計(100円)

Written by Tanigawa

2018/08/22 @ 14:27

カテゴリー: 健康

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