ネパール評論

ネパール研究会

マオイストの憲法案(34)

第8編 立法手続き

第120条 法案提出手続き
(1)すべての法案は人民代表議会に提出。
(2)財政法案,およびネパール軍もしくは武装警察関係法案は,政府提出法案。
(3)「財政法案」は,次の事項に関する法案:
 (a)連邦税
 (b)連邦統合基金など
 (c)~(e)略
(4)略

第121条 法案の可決手続き
(1)議会可決法案は,認証のため大統領に提出。
(2)略

第122条 法案の取り下げ
 略

第123条 法案の認証
(1)議長は,認証のため法案を大統領に提出。
(2)大統領の法案認証は,速やかに議長に通知。
(3)財政法案以外の法案については,国家元首が再審議が必要と考える場合,元首は1月以内に意見を付しその法案を議会に差し戻すことが出来る。
(4)大統領意見を付し差し戻された法案を議会が再審議し,原案のまま,もしくは修正をして再可決した場合,それは再び大統領に提出される。国家元首は,15日以内にこの法案を認証する。
(5)法案は大統領の認証により法律となる。

第124条 政令
(1)連邦議会開会中を除き,大統領は緊急事態に対応するため,内閣の同意に基づき,政令を発することが出来る。
(2)政令は,法律と同等の効力を持つ。ただし,
 (a)次の議会に提出され,議会が可決しなければ,失効する。
 (b)大統領により,いつでも取り消される。
 (c)公布後,6月もしくは議会開会後6日で,失効する。

自治州運営手続き
第125条 法案の提出手続き
(1)法案は,自治州人民代表議会に提出。
(2)財政法案は,政府提出法案。
(3)「財政法案」は,次の事項に関する法案:
 (a)州税
 (b)~(e)略(連邦規定に準ず)
(4)略

第126条 法案可決手続き
(1)州人民代表議会可決法案は,認証のため,速やかに州知事に提出される。
(2)略

第127条 法案の取り下げ
 略

第128条 法案の認証
(1)議長は,議会可決法案を,認証のため州知事に提出する。
(2)~(5)略(連邦規定に準ず)

第129条 政令
(1)州議会開会中を除き,州知事は,緊急事態に対応するため,内閣の決定により,政令を公布する。
(2))略(連邦規定に準ず)

■コメント
大統領・知事+議院内閣制を採っているため,連邦でも州でも,立法手続きがやや複雑である。法案は,議会可決後,大統領または知事に送られ,認証(प्रमाणीकरण)をえて法律となる。

問題は,この大統領ないし知事の「認証」である。1990年憲法では,国王に法案認証権限があった。国王はこれを根拠に認証を拒み,議会立法権に介入した。

マオイスト憲法案では,第123条(4)により,議会再可決法案は15日以内に認証されると定めており,議会優位は保障されているとはいえる。しかし,実際には,大統領や州知事が認証権限を乱用し,議会立法権に介入する恐れがないとは言えないであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/09 @ 09:53

カテゴリー: 議会, 憲法

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