ネパール評論

ネパール研究会

年金制度にみる官僚主義

めでたく65歳となり,年金請求手続を始めたら,これがチンプンカンプンまるでわからない。記入説明文は,英語よりもネパール語よりも難しい。カントよりも難しい。ヘーゲルと比べると,少し易しそうにみえるが,ヘーゲルなら何度も根気よく読めば分かるのに,年金説明文は何回読んでも要領を得ず分からない。結局,ヘーゲルより難しいのだ。

また,お上意識も健在。証明書請求用紙を年金機構HPからダウンロードしたら,なんとA3書式。下々の家庭には高価なA3プリンターなどないことをご存じないのだ。欲しければ,年金事務所に参内し,A3プリンターで印刷してもらえ,ということらしい。

そして,手続には,恐ろしく時間がかかる。ネパールのお役所よりもかかる。ありふれた証明書でも下賜たまわるのに1ヶ月。江戸時代でも,長崎・江戸間は飛脚で10日ほどではなかったか。このネット時代に,1ヶ月とは,スゴイ!

M・ウェーバー先生によると,官僚制は合理的・効率的だが,官僚主義に転化すると,不合理・不効率となる。Machine(組織・機構)が自己目的化し,存続のためだけに巨大なエネルギーを浪費する。判じ物文章,飛脚より遅い証明書下賜など,すべてそのための仕組みなのだ。

愛国者の私は,これまでTPPはケシカランと思っていたが,必ずしもそうではないことが分かった。こんな不合理・不効率の国民年金・健康保険なら,TPP参加で一挙に破綻させ,アメリカの巨大保険会社の合理的・効率的な年金や保険に切り替えてしまった方がよい。

というわけで,私は手続が間に合わず,あわれ無年金・無収入となる。スズメの涙ほどの年金さえももらえず,来年の今頃は,たぶん大阪近辺の公園で野宿しているにちがいない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/15 @ 16:46

カテゴリー: 社会, 経済, 文化

Tagged with , ,