ネパール評論

ネパール研究会

プラチャンダ中国利権vsバブラム印度利権

トリブバン国際空港(TIA)の管理運営をインドの開発投資会社IL&FSに委託するという話は,バブラム・バタライ首相が昨年10月訪印したとき出てきたという(ekantipur, 4 Jul)。

また,このときIL&FSは,カトマンズ-タライ高速鉄道やバイラワ国際空港の建設にも関心を示したという。

このようなインド側のアプローチに対し,バタライ首相がどう対応したのか分からないが,少なくともインド側が親印派バブラム首相を介してネパール開発利権を得ようとしていることは明白である。

これと対照的に,プラチャンダ議長はこのところ目立った動きをしていない。つい数ヶ月前までは,中国系NGO「アジア太平洋交流協力基金(APECF)」によるルンビニ開発の大風呂敷を広げていたのが嘘のようだ。国連事務総長や韓国政府まで取り込み,得るべきものは得たので一休み,といったところか。

ネパールでは,1990年の民主化以降,経済自由化が進められ,公営事業の多くが民営化された。国家財産,国民財産の払い下げ,たたき売りである。そこには当然,巨大利権が生じ,政治家らが介入する。プラチャンダのルンビニ開発やバブラムのTIA民間委託もその一環である。(注:プラチャンダとバブラムはマルクス・レーニン・毛沢東主義を党是とするUCPNの議長と副議長。)

たしか昨年,カトマンズの水道事業の払い下げが議論された。西欧のどこかの会社が買うという話だったが,これはどうなったのだろう? 貧乏人向けの水道管よりも金満階級向けのタンクローリーに投資した方が儲かるということで,立ち消えになったのかな?

資本主義は,このように命の水ですら商売にする。命を売り買いし,あぶく銭を稼ぐ。命も金次第。いじましく,醜い。

ネパールは,他ならぬ世界最強マオイストが率先して経済自由化を推し進めている点において,世界最先端を行くといってよいであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/05 @ 11:27