ネパール評論

ネパール研究会

伝統農法と電力の自給自足:シュールなネパール

日本は柔らかい全体主義、電力も水道も地域独占となっている。福島原発事故で発送電分離が叫ばれているが、自由化は難しいであろう。

これと対照的に、ネパールは自由競争の国。電力も水も自由に調達してよく、自給自足が進行している。

水は、水道不足分を給水タンクローリーから買ったり、町の水商売屋さんから買う。水は普通の商品の一つとして自由に取引されている。

電力も、自主独立のネパール人はお上依存から脱却している。まかなえるだけの余裕のある人や企業は、それぞれ自家発電装置を備え、停電時には必要なだけ発電して使用する。

ネパールが電力自由化超先進国であることを実感させられるのは、最近めざましい高層マンション建設。カトマンズ盆地のあちこちにニョキニョキと建ち始めた。

周囲の水田では農民が昔ながらの農法で稲作をしている。手で稲を刈り、人力脱穀機で脱穀し、自然の風を利用し米を選別している。その背後には、高層ビル群。この超現実的な、シュールな風景のあまりのコントラストに目がくらくらするほどだ。

 ■稲刈りと高層マンション


 ■人力脱穀と風利用籾選別

こんなところに、こんな高層ビルを建てて本当に大丈夫なのか? 停電になったらエレベータも水も止まり、生活できないではないか?

友人に聞くと、心配ないという。高層ビルはそれぞれ自給自足であり、イザというときには自前の電力と水で十分生活できるのだそうだ。

自給自足の前近代的農民のとなりに、自給自足の世界最先端未来型高層マンション。国家依存の近代を超克して勇猛果敢に前進するネパール! 自生的秩序とは、こんなものなのか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/05 @ 12:31