ネパール評論

ネパール研究会

女児選別中絶の拡大

リパブリカ(7月20日)によれば,ネパールでは,特に都市部において,女児選別中絶が拡大している。この問題については,すでに何回か指摘したが,この記事は改めてそれを裏付けるものである。(参照:出生前診断で女児中絶

調査機関:タパタリ産科病院 CAP-Nepal
調査期間:2012年7月~2013年6月
調査対象:3人目を妊娠した妊婦 288人

・胎児が男であることを知っている妊婦 123人
・胎児が女であることを知っている妊婦  16人
・胎児の性別を知らない妊婦      123人
・胎児の性別を知りたいと思っている妊婦 28人

CAPによれば,胎児の性別を知っている妊婦の胎児は,男が123人,女が16人。この顕著な差は,女児胎児を選別中絶した結果だという。

もしこれが事実だとすると,女性にとって悲惨きわまりないし,またネパールの将来にとっても憂慮すべきことだ。周知のように,ネパールでは(かつての日本と同様),家族や世間から女児出産への強い圧力がかかる。しかも,ネパールでも性選別中絶は違法であるにもかかわらず,実際には手術をする医者は処罰されない。法律はあっても適用されないため,違法な性選別中絶が拡大しているのだ。

さらに危惧されるのが,出生前診断の「進歩」により,優秀児選別出産が広まること。ケイタイやWIFIあるいは英語教育などに見られるように,ネパールは日本よりもはるかに「先取的」だ。このままでは,ネパールは生命操作最先進国になるにちがいない。

(注)CAP-Nepal調査は,小規模で,結果をどこまで一般化できるか不明。CIA(The World Factbook,2013)によると,出生性比(0-14歳)は以下の通り。

ネパール  女100:男104
・アメリカ    100: 104
・スウェーデン  100: 106
・日  本    100: 108
・韓  国    100: 109
・インド     100: 113
・中  国    100: 117

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/07/20 @ 14:51

カテゴリー: 社会, 人権

Tagged with , ,