ネパール評論

ネパール研究会

都市の近代化と信号機

カトマンズは,すさまじい建設ラッシュ。いたるところで旧市街が壊され,道路の拡幅・直線化や高層ビルの建設が進められている。都市部に限れば,ネパールにはカネが有り余り,高度成長を謳歌しているのだ。

これは都市の「近代化」である。曲がりくねった細い不合理な道路を幅広の直線道路に造り替え,木造や煉瓦造りの伝統的民家や商店を壊し,幾何学的な高層ビル群に建て替える。直線を基調とする幾何学的な街造りは,街の「合理化」であり「近代化」である。

こうして街全体が加速度的に「合理化」され「近代化」されれば,当然,道路交通体系も「合理化」され「近代化」されていくはずだ。そして道路がそうなれば,いずれ人々の交通=交際,つまりは社会も「合理化」され「近代化」されるはずだ。

ネパールの近代化は,外国援助ではなく,カネによって,つまりは出稼ぎ労働者送金によって,促進されていく。結局はカネであり,資本主義なのだ。

そして,興味深いのが,またしても例の信号機。道路が拡幅直線化され,幾何学的高層ビルが林立するようになっても,ネパールは信号機なしでやっていけるかどうか? それとも,結局は,カネ=資本主義=合理化=近代化=「法の支配」に屈服せざるをえないのか?

いま世界社会=先進資本主義諸国は,途上国に「法の支配」を受け入れさせようと躍起になっている。これは,見方を変えれば,資本主義の外部や周縁部にいる人々を,資本主義世界に取り込み,金儲けをするためである。先進資本主義国のどん欲は,何ともイヤハヤ執念深いものだ。

先進国援助の立ち枯れ信号機を見るたびに,先進資本主義諸国の深慮遠謀に健気に抵抗しているネパール庶民を,「頑張れ!」と,ひそかに応援したくなるのを禁じ得ない。

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■拡幅直線化工事。強制収用補償金は雀の涙(ディリバザール)

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■拡幅工事と消灯信号(バグバザール)/拡幅後も信号消灯(プタリサダク)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/11/08 @ 22:32

カテゴリー: 社会, 経済

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