制憲議会選挙2013(37):指名議席争奪
制憲議会議長と首相が選出されたので,いま最大の課題となっているのは,先述の大臣ポストの配分と,最後に残った内閣指名26議席の選考。
このうち26議席の配分方法は,外から見ていると,なにがなにやら,まったく分からない。新聞報道では,どうやら各党ボスのコネ選考らしく,その筋目当てに各種圧力団体が猛然と圧力をかけているそうだ。
大義名分は,もちろん包摂参加。1月初め時点での社会集団別議席配分は,次の通り(Republica, 4 Jan)。
第一次制憲議会/第二次制憲議会
女性・・・・・・・・・・・・ 197 / 172
障害者・・・・・・・・・・ 3 / 0
性的少数派・・・・・・ 1 / 0
ダリット・・・・・・・・・・ 50 / 40
ジャナジャーティ・・ 218 / 183
女性団体は,女性議員は前回は憲法規定通り1/3だったのに,今回は規定数に達していないとして,指名議席の半分(13)を女性とせよ,と要求している。
障害者団体や性的少数派は,議席ゼロとなったので,自分たちに優先的に議席を割当よ,と要求している。包摂参加は憲法原則なので,彼らの主張にはもっともな根拠があるわけだ。
このようなクォータ制(比例割当)は,諸集団の公平な政治・社会参加の推進には顕著な即効的効果を持つ。たとえば,女性議員33%は,おそらくアジアNo.1であり,日本など足下にも及ばない。性的少数派も,議会に代表を出したこともあって,「第三の性」を公認させ,次は「同性婚」の早急な法制化を要求している。
民主主義制度でも法制度でも,日本はアジアの先進国というのは,もはや何の根拠もない幻想にすぎない。21世紀の民主主義と人権の観点からは,日本はアジアの後進国である。
が,それは認めるとしても,クォータ制的包摂参加に別の問題があることもまた事実である。いうまでもなく,アイデンティティ政治の危険性であり,あるいは少数派の中の少数派の権利の問題などである。そもそも,「制憲議会選挙令」で認められている複数アイデンティティ(複数社会集団帰属)の問題は,今回の選挙において,いったいどのように扱われたのだろう? わけが分からない。
それはともかく,ネパール政治は,大いなる実験政治。そこから日本が学ぶべきことは,少なくない。もはや民主化支援・人権支援など,おこがましい。
■「ミスター&ミス第三の性2010」/デモ行進(Blue Diamond Society)
谷川昌幸(C)
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