ネパール評論

ネパール研究会

指名議席ぬきで冬会期終了

立法(制憲)議会初の冬会期は,1月26日~4月29日。ヤダブ大統領が,暫定憲法第51条(1)の規定により,首相の助言に基づき開会,閉会を宣言した。

この冬会期では,スシル・コイララ首相とネムワン(ネムバン)議長の選出,憲法制定経過の再確認,22政令の承認,各種委員会の設立など,多くの重要な決定が行われた。

ここで不思議なのが,選挙後5か月余,冬会期開会後でさえ3か月余経過しているにもかかわらず,内閣指名26議席が空席のままであったということ。暫定憲法第63条はこう規定している――

第63条(3) 制憲議会は次の議員により構成される・・・・
 (a)小選挙区制により240選挙区から各1名ずつ選出される議員
 (b)比例制により選出される330議員
 (c)内閣が,合意(सहमति)に基づき,国家貢献顕著な人々および選挙で選出されなかった先住諸民族の中から,指名する26議員

26議席は全議員の4.3%だが,内閣指名議席はその割合以上に重要だ。内閣指名は,原理的には,小選挙区制,比例制と同等の重さがあり,憲法の「包摂原理(समावेशी सिद्धान्त)」を象徴する制度の一つだ。代表制の三本柱の一つといっても過言ではない。

にもかかわらず,議会は,内閣による26議席の指名を棚上げにしたまま,長期にわたり審議を進め,とうとう1会期を終えてしまった。これで正統な議会と言えるのだろうか?

内閣が26議席を指名できなかったのは,制度的に,あいまいな,無理なところがあるからである。憲法は,「包摂(समावेश)」と「合意(सहमति)」を原理的に要求しているが,実際には,これでは諸勢力間の公開の場での調整は無理であり,結局は,諸勢力のボスの裏取引に期待せざるをえなくなる。

民主主義は,公開の場での公論を第一原理とするが,暫定憲法の合意(コンセンサス)規定は,それを回避し,非民主的な裏取引を容認する法的根拠となっているといわざるをえない。

140508 ■本会議場(議会HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/08 @ 11:40