ネパール評論

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CPDCC報告書提出,バブラム・バタライ議長

憲法に関する政治的対話・合意形成委員会(CPDCC)」のバブラム・バタライ議長が12月5日,委員会報告書を制憲議会(CA)のネバン議長に提出した。

141208d ■バタライCPDCC議長(同FB)

CPDCCは,新憲法に関する諸問題を審議し合意を形成するために設置された。報告書の提出期限は9月16日であったが,合意形成には至らず,以後4回期限が延長され,ようやく12月5日,報告書が提出された。

しかし,この報告書は,報道で見る限り,およそ報告書の体をなしてはいない。

憲法案作成については,多数派与党のコングレス党(NC)・統一共産党(UML)が,マオイスト中心の野党連合と真っ向から対立しており,妥協の糸口すら見つけられず,二進も三進もいかない状況が続いてきた。そこで,やむなく主要諸政党は12月3日,体裁を取り繕うため,その場しのぎで,バタライCPDCC議長に「議長としての職権」により報告書を取りまとめ提出する権限を委任した。

が,これまた面妖,「議長の独立した判断に任せる」といいつつも,いかようにでも解釈できる玉虫色の無責任委任であった。これにはバタライ議長も困ったであろうが,ともかくも苦し紛れにでっち上げたのが,5日提出のCPDCC報告書なのである。

そもそもCPDCCには,つぎのいずれかの報告が求められていた。最善は,新憲法に関する様々な意見を取りまとめ,諸党合意を形成し,報告すること。そして,もしそれができない場合は,合意できない部分の対立する意見を整理し,一覧表として提出すること(これは制憲議会投票採決のためのものと理解されている)。

ところが,12月5日提出のCPDCC報告書は,これらのいずれでもなかった。憲法草案への諸党合意報告でもなければ,投票採決可能な対立する諸案の一覧表でもない。バブラム議長としては,とりあえず形だけ報告書を提出しておき,再度,委員会に持ち帰り,継続審議するつもりなのだ。

一方,報告書を受け取ったネバン制憲議会議長は,次の4つの選択肢を提示した。
 (1)制憲議会本会議で合意を形成する。
 (2)報告書をCPDCCに差し戻し再審議させる。
 (3)現CPDCCを解散し,新しいCPDCCを組織し審議させる。
 (4)制憲議会内に新委員会を設置し,そこで審議する。

しかし,これは堂々巡り。12月9日開会予定の制憲議会本会議では,与野党入り乱れての大紛糾が避けられそうにない。

141208a 141208b ■ネバンCA議長/オンサリ・マガルCA副議長

新憲法の制定・公布は,2015年1月22日の予定。これはほぼ絶望的で,はや次の期限の観測気球があちこちであげられている。

ネバン制憲議会議長: 憲法案審議が順調にいけば,新憲法の4月15日制定・公布は可能。
プラチャンダUCPN議長:1月22日までに新憲法への基本合意ができておれば,制定・公布が数か月遅れても問題はない。

[参照]
* Parties authorise CPDCC Chair to end deadlock,Himalayan,2014-12-03
* 20 parties also authorise Bhattarai to resolve deadlock,Himalayan,2014-12-03
* CPDCC chair to submit report, HIMALAYAN,2014-12-03
* Bhattarai Asked To Forward CPDCC Report Using Own Judgment,Republic,201-12-04
* Leaders Still Wrestle Over What Happens After Disputed Issues Are Sent To CA, Republic,2014-12-05
* Bhattarai Submits CPDCC Report To CA Chair,Republic,2014-12-5
* Bhattarai submits PDCC report to Nembang, Report includes NC, UML joint proposal, Ekantipur,2014-12-05
* Bhattarai submits report,CA meet scheduled for Dec 9,Himalayan,2014-12-05
* Oppn worried what CA may do to CPDCC report,HIMALAYAN,2014-12-04
* Consensus Must By Tuesday To Produce Statute By Jan 22: Nembang,Republic, 2014-12-06
* New statute possible by April 15, HIMALAYAN,2014-12-05
* Constitution on time if parties are serious in dialogue: PDCC chair, Ekantipur,2014-12-06
* Statute possible by January 22: PM, HIMALAYAN,2014-12-06
* Two-third majority in CA won’t work in constitution making: Dahal,HIMALAYAN,2014-12-06

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/08 @ 09:23

カテゴリー: 議会, 憲法, 政党

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