ネパール評論

ネパール研究会

出入国管理事務の民間委託

出入国管理事務の民間委託をめぐり,もめている。提案は,内務省(バンデム・ゴータム副首相兼内務相[UML])。内務省によれば,現行出入国管理事務は不効率であり,ICAO(国際民間航空機関)の要請しているe-VISAの発行にも対応しきれないので,ビザ申請関係書類のとりまとめ作業を民間委託する。委託期間は当面15年間。ビザ発行そのものを民間委託するわけではない。こうした作業は英国も,VFS Globalに委託している。

こうした内務省提案に対し,議会では,治安などを理由に反対が噴出し,ゴータム内相やパンディ外相を3月29日に「国際関係・労働関係委員会」に呼び,説明を求めることになった。

ネパールのビザ手続,特に延長手続は,たしかに不合理で面倒だ。ネパールの人々のパスポート取得手続のことはよくしらないが,一般の人々にとっては,これもおそらく面倒なのだろう。だから,出入国管理事務が民間委託により合理化されるのなら,その方がよいのでは,と思わないでもない。治安上も,信頼できる専門機関なら,その方がかえって安全かもしれない。

しかし,ここでややこしいのが,この問題も,ご多分に漏れず,政争がらみということ。新聞記事によれば,民間委託反対の急先鋒は,UMLのMK・ネパール幹部らしい。UML党内抗争が,内政にそのまま持ち込まれている。ネパール政治の難しさは,こんなところにもあるといってよいだろう。

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*KOSH RAJ KOIRALA, “GOVT PLAN TO OUTSOURCE IMMIGRATION SERVICES DRAWS FLAK,” Republica,25 Mar 2015
*”Visa scam rages in House Panel summons DPM Gautam,FM Pandey over ‘secret’govt deal with private firm,” Kathmandu Post,MAR 26, 2015

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/03/26 @ 18:13

カテゴリー: 政党, 旅行

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