ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ネパール憲法,改正

ネパール憲法が1月23日,改正された(第一次憲法改正)。制定・公布・施行が2015年9月20日だから,4か月足らずでの改正。
 ▼立法議会(定員601,現議員総数596)
    賛成461
    反対  7
    欠席128

改正されたのは,第42(1)条,第84(5)(a)条,第286(5)条。改正後の憲法正文がまだないので正確ではないかもしれないが,新聞報道によると,主な改正は次の通り。

第42条 社会的公正への権利
 (1)[国家諸機関への比例的包摂参加の権利を保障。ただし,包摂単位となる帰属社会諸集団から「青年」と「先住民(アディバシ)」を削除し,15集団としたことの意味は不明。]
第84条 代議院の構成
 (1)(a)[「小選挙区は,「地理と人口」によってではなく,「人口」を第一に,「地理」を第二に考慮して,区画する。]
第286条 選挙区区画委員会
 (5)[選挙区は,「人口」を第一に,「地理」を第二に考慮して,区画する。また,各郡に,少なくとも1選挙区を割り当てる。]

この改正の結果,国家諸機関への社会諸集団比例包摂参加が強化され,またタライへの小選挙区議席配分が増加するとみられている。
 ▼タライ20郡=79~80議席
  丘陵・山地55郡=85~86議席

この第一次憲法改正は,比例的包摂をさらに一歩前進させたが,マデシ諸派にとっては不十分なものであり,とくにタライ2州の要求は完全に無視された。そのため,マデシ諸派は,第一次憲法改正文書を焚書にし,反憲法・反政府闘争の継続を宣言した。

他方,マデシ闘争を暗黙裡に支援しているとされるインド政府は,外務省スワラプ報道官が第一次憲法改正を「歓迎すべき前進」と述べ,一定の評価はした。しかし,おそらくこれは,訪中と訪印を天秤にかけているオリ首相への揺さぶりとみるべきだろう。もしそうなら,インドの「暗黙の」マデシ支援は続き,マデシ闘争も終息しないことになる。

ネパール憲法は,改正前でも十分に包摂的であったし,ましてや改正後はさらに包摂的となった。しかし,それでもなお,マデシや他の非主流派諸集団を満足させられない。包摂民主主義は,理念は美しいが,運用は難しい。ネパールは,本当にそれを使いこなせるのだろうか?

いずれにせよ,ほんの4か月前,制憲議会の圧倒的多数の賛成をもって制定した憲法を,その憲法による選挙もせぬまま,同じ議会,同じ議員が改正する。あまりに安易。朝令暮改! 憲法といえば,国家の根本法。それをコロコロ変えていては,憲法の権威が損なわれ,国家統治そのものへの信頼すら失われてしまうであろう。

[参照]
*1 KESHAV P. KOIRALA,”Nepal makes first amendment of its constitution four months after promulgation,” The Himalayan Times, January 23, 2016
*2 “Four months after promulgation, Parliament endorses first amendment to the constitution,” Kathmandu Post Report,Jan 23,2016.
*3 KALLOL BHATTACHERJEE, “India welcomes amendments in Nepal Constitution,” The Hindu,January 24, 2016.
*4 “INDIA SAYS AMENDMENT A POSITIVE DEVELOPMENT,” Republica,24 Jan 2016

 160125■Amit Ranjan,”Diversity and Inclusion in Nepal– Hot from Rubbles,” January 19, 2016 (MADHESI YOUTH,January 25,2016)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/01/25 @ 18:44