ネパール評論

ネパール研究会

「中国カード」使用,失敗?

著名なジャーナリスト,ファハド・シャーが,米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』にオリ政権の対印中外交に関する長文の記事を書いている。要点を押さえたよい記事だ。
▼Fahad Shah,”Nepal’s Balancing Act: Walking the Tightrope Between China and India,” Foreign Affairs,2016-02-25

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記事によれば,オリ首相は,訪印時には「中国カード」使用を否定したが,実際には,印のマデシ支援に対抗するため経済・政治関係の強化や訪中先行などの様々な「中国カード」を使ってきた。

しかし記事によれば,ネパール政府の「中国カード」使用は,中国側の利益にはなっても,ネパール側にはあまり利益をもたらさなかった。ジャーナリスト,プラシャント・ジャーもこう語ったという。

「ネパールは,中国カードを使ってみて,地理的にも経済的にも中国は代替国たりえないという単純明快な理由により,そのカードが見てくれだけだったことに気付いた。」(P・ジャー)

P・ジャーは,マデシでありHindustan Times記者でもあるので,発言は多少割り引くとしても,全体としては,この現状分析は妥当であろう。

そして,これを受けたファハド・シャーの次のような結論も,面白味はないが,中庸をえているといってよいであろう。

「インドは優位な立場にあり,ネパールが中国に接近しすぎると,いつでも処罰することができる。・・・・ネパールにとって,最善の選択は,印中の利用を試み,両国をいらだたせるのではなく,両国をうまくなだめ,満足させる方法を学ぶことである。」

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/02/27 @ 17:25