ネパール評論

ネパール研究会

紹介:名和克郎(編)『体制転換期ネパールにおける「包摂」の諸相』

編者によれば,本書は,立憲王国から連邦民主共和国への体制転換期(2006~2016年)のネパールの社会動態を,「包摂(サマーベーシカラン,inclusion)」を鍵概念として多角的に分析したもの。全体の構成は,以下のようになっている。

●名和克郎(編)『体制転換期ネパールにおける「包摂」の諸相 言説政治・社会実践・生活世界』三元社, 2017年3月17日刊,592頁,6,300円

▼帯の内容紹介
「多民族・多言語・多宗教・多文化性を前提とした連邦民主共和制に向けた転換期のネパールを生きる人びとの歩み、その主張と実践がおりなす布置を「包摂」を梃子に明らかにすると同時に、「包摂」をめぐる現象を民族誌的状況(生活世界)の中に位置付け、「統合」から「包摂」へと転換した「民主化」のいまを描きだす。」

▼目次
序章 体制転換期ネパールにおける「包摂」の諸相――言説政治・社会実践・生活世界/名和克郎 
第1章 近現代ネパールにおける国家による人々の範疇化とその論理の変遷/名和克郎 
第2章 ネパールの「カースト/民族」人口と「母語」人口――国勢調査と時代/石井溥 
第3章 国家的変動への下からの接続――カドギのカースト表象の展開から/中川加奈子 
第4章 ガンダルバをめぐる排除/包摂――楽師カースト・ガイネから出稼ぎ者ラフレへ/森本泉
第5章 ネパール先住民チェパン社会における「実利的民主化」と新たな分断――包摂型開発、キリスト教入信、商店経営参入の経験/橘健一
第6章 何に包摂されるのか?――ポスト紛争期のネパールにおけるマデシとタルーの民族自治要求運動をめぐって/藤倉達郎
第7章 そこに「女」はいたか――ネパール民主化の道程の一断面/佐藤斉華
第8章 テーマ・コミュニティにおける「排除」の経験と「包摂」への取り組み――人身売買サバイバーの当事者団体を事例に/田中雅子
第 9 章 ストリート・チルドレンの「包摂」とローカルな実践――ネパール、カトマンドゥの事例から/高田洋平
第10章 乱立する統括団体と非/合理的な参与――ネパールのプロテスタントの間で観察された団結に向けた取り組み/丹羽充
第11章 「包摂」の政治とチベット仏教の資源性――ヒマラヤ仏教徒の文化実践と社会運動をめぐって/別所裕介
第12章 移住労働が内包する社会的包摂/南真木人
第13章 多重市民権をめぐる交渉と市民権の再構成――在外ネパール人協会の「ネパール市民権の継続」運動/上杉妙子 
第14章 現代ブータンのデモクラシーにみる宗教と王権――一元的なアイデンティティへの排他的な帰属へ向けて/宮本万里

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/04/12 @ 10:42

カテゴリー: ネパール, 民族

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