ネパール評論

ネパール研究会

ゴビンダ・KC医師,10項目合意でハンスト中止

ゴビンダ・KC医師は10月18日,政府との間で10項目合意を締結し,13回目のハンストを14日目で中止した。

10項目合意要旨
 ・医学専門職教育に関する政令を10月23日までに閣議決定する。
 ・トリブバン大学医学部授業料の値下げ。
 ・トリブバン大学とカトマンズ大学における医学教育不正調査および責任者処分。
 ・医大新設にあたっては,特に人口と地域を考慮する。

この合意要旨からはKC医師の要求が大幅に認められているように見えるが,政府が約束を守るかどうかは定かではない。

最大の問題点は,医学専門職教育に関する規定が法律ではなく政府政令とされたこと。この政令は3か月以内に議会の承認が必要とされているが,立法議会の会期はすでに10月14日に終了しているし,新議会開会は連邦議会選挙後,おそらくは2018年1月末以降となる。選挙結果がどうなるかも全く分からない。たとえ10月23日までに現内閣が政令を制定しても,3か月以内(1月23日まで)に新議会で承認が得られるかどうか,皆目見当もつかないのだ。

KC医師も,そのことは十分わかっているはずだ。「私は,医学教育の改善と医学部の国内における公平な配置のため,これまで闘ってきた。・・・・いまや,議員の多くが人民の利益のために働いていないことが誰の目にも明らかになったに違いない。彼らは,特定の諸集団の利益に奉仕しているのだ。」(*2)

それでも,KC医師は,政府が10月23日までに閣議で医学専門職教育令を制定すると約束したことを大きな前進と認め,ハンストを中止した。そして,政府がもし約束を破ればハンストを再開する,と宣言した。長期ハンストで身体は衰弱していても,意気はますます軒昂である。

■カトマンズ大学医学部(同HPより)

*1 “Dr KC ends hunger strike after 10-pt pact with govt,” Kathmandu Post, 18 Oct 2017
*2 “Dr KC breaks 13th fast after 14 days,” Kathmandu Post, 19 Oct 2017
*3 “Dr KC ends fast after Deuba pledges ordinance from cabinet,” Republica, 19 Oct 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/10/20 @ 15:39