ネパール評論

ネパール研究会

国会&州会ダブル選挙まで1か月余

ネパールでは,連邦議会代議院(下院)と州議会の選挙が,11月26日と12月7日の2回に分け,実施される。あとひと月少々だが,準備は万端とは言えないようだ。そもそも選挙制度が極めて複雑。欧米諸国が援助がらみで実験的な代表制度を押し付けたからだ。

代議院(下院)
 (1)構成
  定数275(小選挙区選出165,比例制[全国1区]選出110)
  *女性枠:各党議員の1/3以上。
  *国政政党の要件:比例区で3%以上の得票,かつ小選挙区選出議員1名以上。
 (2)比例制全国区の立候補者割当
  ダリット13.8%,先住民28.7%,カス/アーリア31.2%,マデシ15.3%,タルー3.6%,ムスリム4.4%。
  *障碍者も考慮すること。
  *女性候補者,50%以上。

州議会(1院制)
 定員:その州割当代議院議員数の2倍。小選挙区選出60%,比例制選出40%
 各党候補者割当:人口と地域を考慮し,次の集団に割り当てる。女性,ダリット,先住民,カス/アーリア,マデシ,タルー,ムスリム,後進地域,少数者集団,障碍者
 *各党議員の1/3以上は女性。

こんな複雑な制度による選挙を,連邦議会だけでなく州議会をも併せて同時に行うというのだ。各党の立候補者選考が混乱しているのは当然だし,そもそも投票用紙からして,もめている。(日本では,22日の衆議院選のため,混乱を恐れ,地方選を延期した自治体もある。)

選管は,投票用紙は比例制1枚,小選挙区制1枚の2枚とすることにし,すでに印刷準備に入っている(遅すぎはするが)。

投票用紙
 ・比例制1枚:上部=連邦議会用  下部=州議会用
 ・小選挙区1枚:上部=連邦議会用  下部=州議会用

ところが,この投票用紙だと,連邦議会選挙では共闘するが,州議会選挙ではそれぞれ独自候補者を立て闘う政党があれば有権者は混乱するし,小政党や地域政党にとっては不利となる。そのため,これらの政党はこの投票用紙による選挙に反対し,連邦議会選挙用2枚(比例区用/小選挙区用),州議会用2枚(比例区用/小選挙区用)の計4枚とすべきだと主張している。

これはたしかに合理的な案だし,費用も大してかかるわけではない。が,選管は,最高裁による見直し申し立て棄却を受け,投票用紙2枚による選挙を予定通り実施することにした。

いまのところ連邦議会比例区立候補届け出政党は55。かなり少なくなったが,それでもスゴイ数だ。これら政党の相当数が1枚の投票用紙に,連邦議会用と州議会用にズラリと並んで印刷される。政党シンボルマークのオンパレード。選管ホームページに投票用紙がアップロードされるのが待ち遠しい。

 ■8月4日バラトプル市再選挙用投票用紙(選管HP)

*1 “SC refuses to issue interim order in writ demanding separate ballot papers,” Republica, October 18, 2017
*2 Kamal Dev Bhattarai, “Nepal Set for 3-Way Competition in Upcoming Legislative Elections, A surprise alliance between Nepal’s two main communist parties has China excited and India dismayed,” The Diplomat, October 19, 2017
*3 “Separate ballot papers unlikely for upcoming polls: CEC Yadav, The Himalayan, October 20, 2017
*4 “‘Four types of ballot paper needed’,” The Himalayan, September 24, 2017
*5 “RJP objects to same ballot paper for two polls. But Election Commission clarifies ballot papers cannot be changed,” Kathmandu Post, Sep 25, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/10/21 @ 19:13