ネパール評論

ネパール研究会

ゴビンダ医師の市民的抵抗,医学部長解任事件最高裁判決に対して(2)

3.ゴビンダ医師の法廷陳述
ゴビンダ医師は,1月9日の法廷(P・バンダリ判事とBK・シュレスタ判事)において,11項目に分け陳述を行った。趣旨は抗議ハンスト時の発言と同じ。激しい言葉でパラジュリ最高裁長官を容赦なく徹底的に糾弾している。もしこの中に事実に反する部分があれば,法廷侮辱の動かぬ根拠とされかねないほど際どい陳述だ。陳述(弁明書)要旨は,カトマンズポスト記事*によれば,以下の通り。
*”A written reply furnished by Dr KC to the Supreme Court on Tuesday,” Kathmandu Post, 10 Jan 2018.

ゴビンダ医師の法廷陳述要旨
(1)パラジュリ最高裁長官は,2か所から市民登録証を取得している。これは万人周知の事実。市民登録証を1通だけでなく,それ以上取得する人物は,不道徳で不法。これは犯罪。それゆえ,彼を取り調べ処罰すべきだ。

(2)パラジュリ長官は年齢を偽っている。最高裁長官には,カトマンズ郡役所発行の2枚目の市民登録証の年齢に基づき,在職している。ところが[別の市民登録証によれば],彼は2074年アサド月(2017年6-7月)に,すでに満65歳に達している。法定の停年は65歳。この種の行為は「司法商売」も同然だ。

(3)パラジュリ長官は,LS・カルキ職権乱用委員会(CIAA)委員長を無罪にした後,甥をCIAA顧問に採用してもらった。権威ある司法が売り買いされた。彼は職権乱用罪で処罰されるべきだ。

(4)パラジュリ長官の中等教育終了試験(SLC)合格資格には疑義がある。この件にはスシラ・カルキ前長官の関与も疑われている。裁判官に必要なSLC合格資格を持たずに,どうして最高裁長官たりうるのか? これは,国家や裁判所を暗闇に引き込む犯罪ではないか?

(5)パラジュリ長官は,SLC以外の学歴や資格についても,疑義がある。司法委員会や憲法委員会での審査資料に基づき,調査せよ。

(6)ジャグディシュ・アチャルヤ土地関係事件の裁判で,パラジュリ長官は政府の土地政策を否定し「土地マフィア」有利の判決を下した。「司法が売られた」のではないか?

(7)パラジュリ長官のホテル・カジノ税免除判決は,「司法の死」をもたらすものだ。国家は税収を失った。「司法を殺す」人物に司法の独立が守れるのか?

(8)パラジュリ長官は,Ncell[通信事業会社]事件など様々な事件の裁判において,腐敗を助長した。Ncellの場合,600億ルピーの納税を免れた。これは法の支配に対する嘲笑ではないか。彼の下した判決は見直されるべきだ。

(9)パラジュリ長官は,義理の甥を半年の間に補助裁判官から補助裁判官長,高裁裁判長へと昇進させた。名誉ある最高裁長官たるに不可欠のモラルなし。関心を持つ市民の一人として,彼の辞任を求める。さもなくば,司法の独立と自由が妨害され続けるだろう。

(10)パラジュリ長官の就任は夜の10時半。前任のスシラ・カルキ長官に対する弾劾動議が提出されたその夜のことだった。どの法がこのようなことを認めているのか? 不法行為に関与する人物に司法の尊厳は守れない。彼は辞任すべきだ。

(11)『日刊カンチプル』は,その記事「ゴパル・パラジュリあれば,医科大訴訟あり」を理由に法廷侮辱罪で訴えられたが,無罪となった。記事の記述は司法的に認められたのだ。そのような人物が名誉ある最高裁判所長官の職にとどまることは適切ではない。

[結び]「ゴパル・パラジュリ最高裁長官は,司法への信頼および司法の尊厳と独立に対し挑戦してきたのであり,その行為は法廷侮辱罪にあたるので,私は裁判所に対し,彼を法廷侮辱罪に問うことを要請する。私に対する告発には根拠がない。パラジュリを除く他のすべての最高裁判事からなる法廷に,この事件の審理を求めたい。」

■最高裁(同HPより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/21 @ 14:25