ネパール評論

ネパール研究会

ゴビンダ医師のハンスト闘争(9)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ
2.ゴビンダ医師ハンスト略年表
3.マテマ委員会報告
 (1)保健医療専門職教育に関する上級委員会(マテマ委員会)
 (2)「マテマ委員会報告」要旨 [以上前出]

4.医学教育令制定と医学教育問題調査委員会報告
(1)医学教育令の制定
ゴビンダ・KC医師のハンストは,「マテマ委員会報告」提出後は,その速やかな実施が具体的な要求の中心に据えられることになった。

このゴビンダ医師の要求は,デウバ内閣(NC, 2017年6月7日~2018年2月15日)が,その政権末期に「医学教育令2017年」を制定・発布(大統領署名11月11日)したことにより,相当多くの部分が形式的には実現された(*3,*4)。

しかしながら,この「医学教育令」は,改正できず失効した旧医学教育法の代替政令にすぎず,議会で承認されなければ失効するし,大統領によりいつでも撤廃できる(注)。そのためゴビンダ医師は,「医学教育令」の速やかな施行を求める一方,同政令を法的により安定した「医学教育法」として制定することを次の具体的な要求の中心に据え,闘争を継続することになった。

しかしながら,2017年末選挙で大勝し次期政権を担うことになった共産党(UML+MC)はコングレス党以上に保健医療改革には消極的であり,ゴビンダ医師の改革闘争は予断を許さぬ状況になってしまった。

 (注)憲法114条要旨:議会閉会中に対処が必要な事態が生じたときは,大統領が内閣の助言に基づき政令を発布する。政令は法律と同等の効力を持つが,発布後開会の両議会のいずれかで否決されれば,失効する。また,政令は大統領によりいつでも撤廃される。さらにまた,政令は議会が否決せず大統領が撤廃しなくても,議会開会後6日経過すると失効する。

▼MEC医師資格試験合格率(保健省HP)

(http://dohs.gov.np/wp-content/uploads/2017/09/Nepal-Medical-Council.pdf)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/11/30 @ 17:11

カテゴリー: 健康, 教育

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