ネパール評論

ネパール研究会

ゴビンダ医師のハンスト闘争(28)

7.ハンスト:開始から終了まで
  (1)ジュムラでハンスト開始
  (2)体調悪化

(3)ゴビンダ医師支持の拡大
ゴビンダ・KC医師がジュムラに入りハンストを開始すると,KC支持がジュムラやカトマンズで一気に高まり,そしてそれが全国へと拡大していった。以下,カトマンズ強制移送までの推移概要(日時のズレが多少あるかもしれない)。

6月30日:ジュムラでハンスト開始。
7月1日:ジュムラでKC支持署名開始。警官多数動員。
7月3日:KAHS,救急を除きスト。ムグとカリコットでも医療スト。(*13)
7月6日:バラトプル病院で10時から15分間,KC支持医師スト。
7月7日:ネパール医学協会(NMA: Nepal Medical Association),政府に対しKCの改革要求への回答が72時間以内になければ,医療機関スト実施を通告。7~8日,マイティガルでKC支持デモ。(*29)
7月9日:NMAの回答要求に対し,政府が話し合いを提案するも,KC側拒否。
7月10日:ジュムラで女性のKC支持デモ。
7月11日:NMA,全国の各病院前で毎朝10時~11時,KC連帯スト開始。
7月13日:①KC支持諸組織,共同声明発表。ネパール教授ユニオン,弁護士会,医師会,看護師会,医療職員会,カトマンズ大学教員組合など(*34)。②TU教育病院医師ら,マイティガルでKC支持デモ。
7月15日:ジュムラでKC支持拡大,立ち入り禁止区域にも入り警官隊と衝突。KCカトマンズ移送ヘリ着陸すれば破壊,ジュムラで交渉できないのなら郡役所閉鎖などと主張。(*36,40)
7月16日:①リパブリカ社説「無視の17日間」――[要旨]KC支持は,マイティガルKC支持集会など,国民運動となりつつある。オリ首相は見ているだけ。共産党はKCがコングレス党と手を組んでいると非難。が,KCはコングレス党政権時も改革闘争をしていたのであり,この非難は的外れ。「KC医師の要求の核心は,誰でも受けられる保健医療と医学教育であり,われわれはこれを求めるKC医師を支持する。ネパールの公衆保健医療は乱雑貧困きわまりないのに,貧しい人々はそれに依存せざるをえない。ところが,政治家たちは,ちょっとしたケガや病気でも外国へ行き大金を払い私立病院で治療を受ける。KC医師は,この現状を変えようとしている。ジュムラのような遠隔地でも彼が支持されているのは,そのためだ。ジュムラでは,女性も老人も街頭に出てKCを支持し,政府に対し彼の要求を受け入れるよう訴えている。彼らはKCを救い主と見ているのだ。彼らは政府に怒っている。もしKC医師に何かが起これば,オリ首相の政府は,国内でも国際的にも信用を完全に失うことになる。オリ首相がもし自分の評判を大切にするなら――われわれはそう信じているが――,彼はKC医師の抗議を誠実に受け止め,彼の諸要求に応じる方法を探るべきだ。手遅れになると,取り返しがつかないことになる。」(*37)
7月18日:NMA,総決起決定。19日に全国の公私立病院,医院,診療所を救急を除き閉鎖。医療関係者は19日,マイティガルに集結せよ。責任はすべて,KCの要求に応じない政府にある。
7月19日:①リパブリカ社説「首相,手法を改めよ」――[要旨]「K.P.シャルマ・オリ首相は,民主的に選ばれた政府の長たるに相応しくないほどの傲慢さをみせている。彼は,人民や彼の党に対し,政府のあらゆる行為を――善悪にかかわりなく――是認することを求め,批判に対しては不寛容になりつつある。彼は,彼に誤った情報を伝えたり,彼の聞きたいことだけを彼に告げる『イエスマン』を身辺に集めているようだ。」(*41)
②NMA声明「政府がKC医師の要求を無視すれば,医療機関の救急も閉鎖する。結果の全責任は政府にある。」(*42)
③ロチャン・カルキNMA書記長「KC医師の命を救い,彼の要求に応えるよう首相,保健大臣,教育大臣に訴えてきた。が,政府はわれわれの訴えを聞かなかった。だから,われわれとしては,人々の治療をやめたくはないのだが,仕方なく外来診療の拒否を行うのだ。」(*42)
④NMA,医師ら医療関係者約1000人参加し,マイティガル⇒ニューバネスワル抗議デモ行進。MR・シュレスタNMA会長「これはKC医師の訴えへの支持を示す象徴的な抗議活動だ。特定の政党を支持したり政府自体への反対をしたりしているのではない。」KCの訴えを聞き入れよ,さもなければ医療サービス無期限休止。(*40,45)
⑤全国で医師も参加しKC支持デモ拡大。カルナリ州,救急を除き全医療機関閉鎖。

 
■NMAロゴ/Save Prof. Dr. Govinda KC(FB)

Dr. Govinda K.C. 15th Hunger Strike(YouTube)
 
*26 DB BUDHA, “KC supporters gather in Jumla,” Republica, July 2, 2018
*27 DB BUDHA, “We can’t treat Dr KC at present site: Doctors,” Republica, July 4, 2018
*28“Bharatpur Hospital docs stage protest in support of Dr KC,” Kathmandu Post, Jul 6, 2018
*29“Protests in Kathmandu in support of Dr KC,” Republica, July 8, 2018
*30“NMA gives govt 72 hrs tofulfill Dr KC’s demands,” Republica, July 9, 2018
*31“Dr KC rejects PM’s proposal for one-on-one by phone,” Republica, July 10, 2018
*32“Dr KC: ‘New opposition’ for govt, ‘hero’ to locals,” Republica, July 11, 2018
*33“Docs to stage hour-long rally at medical institutions,” Republica, July 11, 2018
*34“In a symbolic protest, Dr KC supporters gift Marsi rice to PM Oli,” Republica, July 13, 2018
*35“Residential doctors demonstrate in support of Dr KC,” Republica, July 13, 2018
*36 Devendra Basnet/DB Budha, “Jumla locals urge govt to come for talks with Dr KC,” Republica, July 15, 2018
*37“Editorial: 17 days of neglect,” Republica, July 16, 2018
*38 Devendra Basnet/DB Budha, “Docs prepare to place Dr KC on ventilator,” Republica, July 16, 2018
*39 DB Budha, “Struggle Committee demands safety for Dr KC’s life,” Republic, July 16, 2018
*40“Docs to shut down services except for emergency on Thursday across country,” Republica, July 18, 2018
*41“Editorial: Prime Minister, mend your ways,” Republica, July 19, 2018
*42“Health workers boycotting OPDs from today,” Republica, July 19, 2018
*43“Dr KC says govt is indifferent,” Republica, July 19, 2018
*44“After forced airlift to capital, Dr KC continues fast-unto-death,” Republica, July 20, 2018
*45“NMA protests against govt apathy to Dr KC’s demands,” Republica, July 20, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/03/24 @ 09:57

カテゴリー: 健康, 政治, 教育

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