前近代的共同体監視社会から超近代的カメラ監視社会へ
通俗憲法論によれば,近代憲法は国家権力を縛るものだそうだが,近代超克国家ネパールでは,そんな通俗近代憲法論など,全く気にもかけていない。制憲議会では憲法制定の目途さえ立たないのに,現実社会ではSF的超近代的万人監視体制づくりが着々と進んでいる。前近代的な共同体監視社会から,ハイテク・カメラによる超近代的万人監視社会への一足飛びの跳躍だ。
カトマンズに来てビックリ仰天したのは,いたるところに監視カメラが設置され,しかも驚くべきことに,多くがちゃんと稼働していること。数日前の新聞によれば,監視カメラは今後さらに増設される予定だ。
これらの監視カメラは,表向きは,交通管制が目的だが,カメラには車だけでなく人間も牛も犬も写る。交通管制が名目でも,その気になれば,いつでも犬や牛や人間の行動の監視に活用できる。犬が人にかみついていないか? 牛が路上に寝そべっていないか? そして,不逞の輩がデモや挙動不審の行動をしていないか? こんなことが,すべて監視カメラで常時監視できる。超近代国家の指導者なら,誰しも,喉から手が出るほど欲しがる統治の必須アイテムだ。その監視カメラが,いまやカトマンズの街中,いたるところに設置されており,しかも今後さらに増設されるというのだ。
たとえば,インドラチョークの近くの人通りの多い狭い十字路。その交差点とは到底呼べないほどの狭い十字路の上にも,監視カメラがあり,レンズの方向を不気味に動かしつつ,四方八方を監視している。
こんなところで,いったい何を監視しているのか! 監視カメラをしつこく激写していた私も,当然,監視カメラで監視され,一挙手一投足を記録され,おそらく不審者リストに掲載されているであろう。無事,出国できるだろうか? ちょっと,心配になってきた。
谷川昌幸(C)
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