ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

震災救援の複雑な利害関係(10):単一窓口政策と首相基金(2)

3.「単一窓口政策」再説
ネパール政府の「単一窓口政策」ないし「首相災害救援基金[首相基金]」は,各方面――特に欧米の援助関係機関――から厳しく批判されているが,基本的事実を確認するため一部重複があるが,ここでもう一度,5月2日付政府公文書「ネパール地震緊急事態における救援について」(2枚2頁ないし2文書)に基づき,この政策の内容を紹介しておこう。速読要約のため,脱落や誤りがあるかもしれない。詳しくは公文書原文をご覧ください。

150523

[1枚目要旨]
ネパール地震緊急事態における救援について

2015年5月2日

ナラヤン・ゴパル・マレゴ(首相内閣事務局長・首相基金事務局長)

ネパール政府は,首相災害救援基金[首相基金,PMDRF]を設置した。目的は,自然災害の調査と被災者の救助,救援。

ネパール政府および他の政府や国際機関から受け入れた救援金は,首相基金が保管する。首相基金保管の救援金は,他の目的で使用することも,公務員等の給与や行政諸経費に回すこともない。

首相基金の活動は,国家計画委員会委員長を長とし,関係8省の事務局長を委員とする委員会が監督する。基金からの出金手順は次の通り:
 (1)出金案への全会一致による同意
 (2)内務省を通して郡事務局長あてに出金
  *郡事務局長は,郡救援基金の代表

中央の首相基金と郡救援基金からのすべての出金は,透明性と説明責任を確保するため,毎年,国家会計監査委員長による監査を受ける。

首相基金は,「首相基金運用規則2006」に則り運用される。

首相基金の目的は,自然災害被害者の効果的救助・救援。そのため「迅速処理(fast track)」で対応し,通常の行政手続による遅延を回避する。首相基金は単一窓口サービスを提供する。これにより義援金を統合し,重複を防止し,被災者に必要な救援を公平に配分することができる。

2015年4月25日の大震災後,様々な個人や団体が募金口座を開設した。政府は,被災者救援のための誠実な努力は評価するが,政府には,募金活動や救援金分配を規正する義務もある。善意の寄金の不正使用を防止し,被災者の権利を守るためである。

こうした観点から,政府はネパール中央銀行(Nepal Rastra Bank)に助言し,4月29日付で通知を出してもらった。すなわち,すべての震災救援金は首相基金に入れられるものとし,募金関係口座からの出金はいっさい認められない,とする中央銀行通知である。

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以上がNG・マレゴ事務局長通達の1枚目の要約。当初,報道はもっぱらこの内容の通達をめぐって行われ,批判が殺到したが,しばらくすると2枚目(2頁目)の記載内容が報道されるようになり,批判は少しトーンダウンした。

通達にはページが1,2と打ってあり,2枚目には文書名も日付もないので,当初から2ページの1文書だったのかもしれないが,報道の経緯をみると,どうも不自然。あとで付け足した追加文書(言い訳文書)のような感じがするが,いずれとも断定はできない。

ともあれ,2枚目(2頁目)の文書の内容は以下の通り。

[2枚目要旨]
上記通達は,2015年4月25日以前に開発援助団体,救援団体,その他の社会諸組織が開設していた口座の使用を規制するものではない。

救援金の最善の使用と救援金の被災者への公平な分配を確実なものにするため,救援活動をする諸団体には,中央政府および郡レベル関係諸機関との緊密な協議が要請されている。

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[英語版文書タイトル]
Providing Relief in Response to the Nepal Earthquake Emergcncy
   2 May 2015
 Narayan Gopal Malego
   Secretary, Office of the Prime Minister and Council of Ministers, and
   Member-Secretary of the Prime Minister Disaster Relief Fund

[追加](2015-06-05)
その後の展開については,以下参照。
・けぇ がるね?日記 【報道】ネ政府、NGO活動指針を策定
・ネパール政治経済ニューズ 地震関連の物資、金銭の寄付について(2015年6月4日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/05/23 @ 22:05

カテゴリー: ネパール, 行政, 国際協力

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