ネパール評論

ネパール研究会

「タルー州」要求デモ隊衝突,死傷者多数

極西部カイラリ郡ティカプルで8月24日午後,統一「タルー州」を要求するデモ隊と警官隊が衝突,死者8名余と負傷者多数(40~60名)が出た。いまわかっている死者は,警官5人,武装警官2人,子供(2歳男児)1人。

カイラリ郡は,タルー民族が43.7%。東隣のバルディア郡はタルー民族52.6%。ところが,8月23日に制憲議会上程の憲法案では,カイラリ郡は西隣のカンチャンプル郡(タルー23.3%)とともに,バルディア郡など東側のタルーの多いタライ諸州とは切り離され,極西部丘陵諸郡からなる第7州に組み入れられることになってしまった。これは,タルーからすれば,民族分断支配に他ならず,とうてい許容できないということになる。

そこで「タルー統一闘争委員会」などの呼びかけで,統一「タルー州」要求デモが広がり,政府の出した外出禁止令(11:00~17:00)をも無視し,政府施設「ネパール政府」表示の「タルー州」への書き換えを図るなど,激しい反政府闘争を繰り広げてきた。そうした中,24日午後,約2万人のデモ隊と,それを阻止しようとした警官隊とが衝突,多数の死傷者を出すことになってしまった。この衝突は,紛れ込んだマオイスト分派過激分子の煽動の結果だとも言われているが,事実かどうか,まだわからない。

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 ■カイラリ郡ティカプル(赤印,赤表示)(Google)

他方,東部タライでも,マデシ系の人々が,モラン,スンサリ,ジャパなどのタライ諸郡を丘陵中心の第1州に組み入れることに反対し,激しい闘争を繰り広げている。また,ヤダブやタルー,ムスリムの多い中部タライのラウタハトやサルラヒでも反政府闘争が激化している。このように,西部タライだけでなく東部・中部タライでも,先行きは予断を許さない。

もともとインド国境沿いのタライは,各郡の最多民族図(下掲)を見てもわかるように,タルー,ヤダブ,ムスリムなどが多く,北方丘陵地や山地とは民族/カースト構成が大きく異なる。したがって,カトマンズ中央権力がここに人為的に州区画線を引こうとすると,どのように引こうが,抵抗は免れない。実に難しい問題である。

▼憲法案の7州連邦制(karma99.com)
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▼郡別最多民族(karma99.com)
150826d*薄茶タルー,濃茶ムスリム,赤ヤダブ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/08/26 @ 20:15