ネパール評論

ネパール研究会

在ネ外国人への警告:ネパール入管局&英国政府

1.ネパール入管局の警告表示
ネパール内務省入国管理局が,一時滞在ビザ入国外国人に対し,強い調子の警告を出している。

警告は,入管局ホームページを開くと,ポップアップで最前面に開く。いつからこの警告が出始めたのか定かではないが,ネット上で話題になりだしたのが英国人画家トラバース氏逮捕・勾留事件(5月15・16日)後のことだから,おそらくそのころからであろう。警告の要点は,次の通り。

外国人への警告(内務省入管局)
下記の規定を遵守すること
1.観光ビザ,学生ビザ,報道ビザ,親族ビザ,配偶者ビザおよび居住(residential)ビザで一時滞在の外国人が,ネパール国内で報酬付きの活動をすることは禁止されている。
2.これらの禁止行為を行った外国人は,最長10年間の再入国禁止を付け,またはそれを付けることなく,国外退去処分とする。当該外国人のビザは無効とし,5万ルピー以下の罰金に処する。
注意:一時滞在ビザの外国人には,ビザ取得目的以外の活動は許されていない。

この警告表示は,前述のように,カナダ人ペンナー氏のツイッター政府批判発言事件(5月2・3日)と英国人画家トラバース氏の反政府闘争参加事件(5月15・16日)を受けたものであろう。もしそうなら,ここでビザ取得目的外活動として特に警戒されているのは,政治的発言や政治的活動への関与ということになる。

入管局のケダル・ネウパネ局長も5月20日,こう明言している。「これまで重罪の外国人しか国外退去処分とはしなかったが,これからはネパール内政に関与した外国人をも国外退去または/および罰金に処するであろう」(Nepali Times, 20 May)。

160523■入管HPトップページ

2.英国政府の訪ネ注意勧告
画家トラバース氏が逮捕・勾留(5月15・16日)された英国は,5月19日,ネパール旅行注意を勧告した。

「ネパールでは新憲法に反対する抗議やデモやストライキが国中で頻繁に行われている。・・・・抗議行動は突然始まったり暴力化することがある。反対派と警察との衝突はどこで起こるかわからない。反対運動には近づかないこと。もしネパールで政治活動に巻き込まれたら,国外退去および/または罰金を含む処罰を受ける可能性がある。」(英政府HP)

このように,英国政府の対応はすばやいが,そこは政治大国,とりあえす注意しておいた,といったアリバイつくりであろう。前の駐ネ英国大使も,改宗の自由を認めよと平然と公言し,さっさと帰国してしまった。独立自尊の英国人が,大使館の注意勧告くらいでネパールでの行動を自己規制するとは思えない。

しかし,それはそれ。もしネパール政府が外国人の国内での政治的行為の取り締まりを報道通り強化するなら,ペンナー事件のように,在ネ外国人にはツイッター発言ですら自由にはできなくなる。これは,大変なことだ。オリ政府は,どこまでやるつもりであろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/05/23 @ 11:28