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新舟60フライトと中国債枠倍増
1.新舟60フライト開始
ネパール航空(NAC)が,中国政府供与「新舟60(Modern Ark 60)」のフライトを開始した(ネパール各紙)。
フライト:カトマンズ ⇔ ビラトナガル,バドラプル,バイラワ,ダンガディ
料金:他社の約半額 (カトマンズ-ビラトナガル:3505ルピー)
パイロット:当初は機長中国人,副機長ネパール人。
いつものドタバタだが,報道通りだとすると,意外に早く営業フライトには入れた。さすが,ネパール。
[参照]飛行機プレゼント,中国政府/飛べない「新舟60」/飛行機,パソコンから日用品まで中国製
2.中国債枠倍増
一方,ネパール政府と中国政府は,人民元建て中国債の年間購入枠を現行の12億元から2倍の24億元(372億ルピー)に拡大することに合意した。ネパール政府が中国債の購入を始めたのは,昨年から(Himalayan, 25 Jan)。
ネパール政府の外国債購入は,インド国債が1070億ルピー,米国債が143億ルピー。中国国債は新規枠いっぱい購入すれば,インド国債にはまだ及ばないが,米国債より多くなる。中国国債は配当が4%ほどで有利だというのが表向きの理由だが,実際には,おそらくそれだけではあるまい。そのへんの事情はよく分からない。
3.トンガと中国とネパール
ネパールは,上記のように,急速に中国経済圏に引き入れられつつあるが,ここで参考になるのが「トンガ新舟事件」。産経ニュース記事によれば,概要は以下の通り(「札つき『危ない中国製航空機』に追い詰められる『トンガ王国』」2013.8.19 )。
トンガでは,ニュージーランドの航空会社が国内便を運行していたが,2013年,中国の「新舟60」無償供与をきっかけに,中国系新会社「リアルトンガ」が設立され,「新州60」や「運12(Y12)」による国内便運行を始めた。ネパール航空同様,当初はパイロットも技術者も中国支援。リアルトンガHPでは,いまも中国製2機種のパイロットと技術者が募集されている。
このトンガの動きに怒ったのが,ニュージーランド。産経記事によれば,ニュージーランド政府は,トンガでの新舟60利用は危険だと警告し,観光開発援助820万ドルの供与を停止してしまった。
ニュージーランド政府の対トンガ強攻策は,表向きは新舟60の危険性だが,その背景にはトンガへの中国の津波のような急進出があるという。いまではトンガの対外債務の6割以上が中国。インフラの多くも中国援助。人口10万人のトンガに,中国人が数千人住んでいるという(「中国系トンガ人」も含めて数千人か?)。
当然,トンガ有力者と中国側との癒着が進み,様々な腐敗もはびこってくる。産経記事によれば――
「今年[2013年]5月にはオーストラリアのABCラジオが、王族系企業に中国の不透明な金が流れているとの民主化団体の告発を伝えた。また英BBCは7月、雨が降ればあふれて道路脇の家に流れ込む側溝や、冷房や維持費がかかる大仰な建物などを現地の気候や事情に配慮しない援助を報じている。・・・・
トンガからの報道によると、リアルトンガは8月に入ってから新舟60の運行を開始した。操縦にはトンガ人とともに中国人もあたっているという。国際機関からの認証を得たとしているが、ニュージーランドが警告を発するなかでの運行開始。小さな王国に贈られた「危ない飛行機」はいまや、政治的にも危険な飛行機になってきた。」(同上)
人口超大国中国が,経済的にもアメリカをしのぐ超大国に生長し,世界各地に「進出」するのは必然だとすれば,産経記事の指摘するような問題は他でも大なり小なり起こっていると見てよいであろう。
ネパールは,国境を接するだけに,中国の経済進出への対応はいっそう難しい課題となるであろう。
谷川昌幸(C)
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