ネパール評論

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AI化社会の近未来(5)

(5)教育のAI化
教育は,積極的かつ継続的に個々の対象に関与するという点では,裁判よりもAI向きかもしれない。

もともと「学ぶ」は「まねる」ことであり,「習う」も「なれる」「まねる」ということ。AIは,つねに蓄積・更新しつつある膨大な学習情報の中から,それぞれの学習者個々人に最適なものを選んで与え,学ばせる。そして,学習者が失敗したら,その原因を分析し,誤りを修正させる。AIは怒ることも倦むこともない。人間の教師よりもはるかに懇切丁寧な個別指導が可能だ。

入試は,人間によるよりもAI入試の方が迅速,公平,安価であることはいうまでもない。AIには受験生の「人間性」が判断できないなど非難されるかもしれないが,要するそれは採点者の個々人の根拠なき「好み」による選考の自己弁護にすぎない。入試は,公正たろうとすれば,AI丸投げでよい。採点者の主観が排除されるから。


Keith Lambert, Education World, nd. / KRISTIN HOUSER, Aug. 27, 2018

Andrew George,Jul 27, 2019

(6)AIによる翻訳,文章作成,作曲,ゲーム対戦など
AIは,これまで人間にのみ可能と信じられてきた文学や音楽や絵画の創作にさえ進出し始めた。

翻訳では,AIはすでに実用レベルに達している。たとえばGoogle翻訳。無料だが,瞬時に世界のいくつもの言語に翻訳し,文字や音声で結果を知らせてくれる。まだ不自然な部分が少なくないが,いずれ日常レベルでは問題なく使用できるようになるだろう。音声翻訳機も多数販売されている。外国語学習はもはや不要。


POCETALK / Easy Talk

文章作成も,マニュアルのような実用文であればほぼ問題なく,またニュースのような報道記事であっても相当のところまで,すでにAIでやれる。むろん主観的要素の強い小説や詩ともなると,もう少し難しいだろうが,それでもAIが古今東西の作品を手あたり次第読み込み,人間心理と合わせ分析を深めていけば,いずれ人間よりもAIの方がより感動的な小説や詩を書くことができるようになるだろう。

 *「ここまでできる!AI(人工知能)によるライター代行ツール4選」2019.01.05
 *David Ibekwe & Fraser Moore, “AI will soon write better novels than humans, according to a computer scientist,” Bussiness Insider, Mar. 18, 2018,

作曲については,すでにAI作曲アプリがいくつも開発され,使用されている。音楽は,音階,和音,リズム,音色等の組み合わせだから,文章よりもはるかにAI向きだ。もしAIが既存の曲を網羅的に読み込み,音楽を聴くときの脳波変化等と組み合わせ分析していくと,人間作曲以上に人間を感動させる名曲を作曲することがAIにはできる可能性が高い。すでにAI作曲の作品を収録したCDも相当数発売されている。たとえば,”I Am AI”。

絵画についても,同じこと。「AI画家」が描いた肖像画、4800万円超で落札(CNN, 2018.10.26)。

AI勝利が明確になったのが,ゲーム対戦。チェスに始まり,将棋,囲碁でも,人間はAIには勝てなくなった。しかも,敗北後,人間側がAIの差し手をいくら分析しても,なぜ駒をそのように動かしたのか理解しきれない場合が少なくない。AIがブラックボックス化し,人間支配の外に出始めたことは明らかである。

 *「チェスではロボットに決して敵わないことを人間はほぼ受け入れたが、今度はそのロボットですら、他のロボットには決して敵わないことを受け入れざるを得なくなった。」JACKSON RYAN, CNET Japan, 2018年12月10日 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/08/23 at 15:33