ネパール評論

ネパール研究会

最高裁,パシュパティ埋葬許可命令

最高裁は3月18日,政府とパシュパティ地域開発トラスト(PADT)に対し,スレスマンタク森への他宗派埋葬許可を命令した。

キリスト教会の新憲法助言委員会は,政府に対し,代替墓地提供と,それまでのパシュパティの森への埋葬継続を要求している。

これに対し,世界ヒンドゥー協会(WHF)は,パシュパティはヒンドゥーの聖地であり,キリスト教会はここを墓地として使用すべきではない,と反論する。キリスト教会は自分で墓地を探すか,政府に探してもらうべきだというのだ。

18日の最高裁命令は,WHFやPADTの言い分と真っ向から対立しており,当然,ヒンドゥー側は最高裁に異議申し立てをすることになる。

これまでにも述べたように,これは、結局,死生観をめぐる争いであり,本来なら、そうしたものを政治の場に持ち出すべきではない。国家世俗化は,皮肉なことに,本来隠されてあるべき非政治的な死後の世界を不用意に暴き,生臭い生者の政治の世界に持ち出してしまった。

死者の祟りは恐ろしい。墓地使用問題を何とか政治化することなく,死後の世界を知る聖職者・聖者の知恵を持ち寄り,解消してもらいたいものだ。

* ekantipur, 2011-03-21

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/03/22 @ 08:36