ネパール評論

ネパール研究会

マオイストの憲法案(11)

4(4)平等権
マオイスト憲法案第24条は,「法の前の平等」を保障している。同様の平等権規定は90年憲法にも現行暫定憲法にもあるが,マオイスト案は差別禁止理由をさらに詳細に列挙している点に特徴がある。

[禁止される差別]
90年憲法:宗教,人種,性,カースト,部族または信条による差別,不可触民差別,男女賃金差別
暫定憲法:上記に加え,出自または言語による差別,男女の社会保障差別
マオイスト案:上記2者に加え,性的指向,生物学的特質,心身障害,健康,婚姻関係,妊婦,経済状態または出身地による差別,遺産相続の男女差別

[特別措置理由]
90年憲法:女性,子供,老人,心身障害者または経済的・社会的・教育的低開発層
暫定憲法:上記に加え,ダリット,先住ジャナジャーティ,マデシ,農民または労働者
マオイスト憲法案:上記2者に加え,被抑圧地域,ムスリム,後進階級,少数派共同体,周縁的共同体,存続の危機にある共同体,貧困線以下の人々,青年,老人,性的少数派,経済的・社会的・文化的に低開発の孤立した人々。

以上のように,マオイスト案では,これまで以上に多くの理由を挙げ,差別が禁止され,また格差是正のための特別措置が認められている。

これを見ると,ネパールで今どのような差別が問題になっているかがよく分かるが,しかし,憲法にこれほど詳細に描き込む必要があるかどうかについては疑問の余地が残る。

マオイストの憲法案(10) (9) (8) (7) (6) (5) (4) (3) (2) (1)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/04/08 @ 16:34